買い戻しの経済学
中途退職した「元社員」の再入社をと、専門人材不足の大手企業が交流サイトでチャンスをうかがっているという。何かの理由でいったん辞めた、辞めさせられたのに、また撚りをもどす。越えないといけないハードルは高くないのでしょうか。昔の方がよかったと思う気持ちを、どうやって喚起するのでしょうか。
でもそんな例、考えてみるとたくさんありますよね。言わずもがな、男女の仲。これは事例が多すぎるから横におきます。
身近な例で、同僚のIさん。メルカリにはまっていて、腕時計やかばん、カメラ、LEGOの自作模型などを売ったり、買ったり、熱心にやってます。
何年か前に、通勤には少し大きめのリュックサックを買って「なんでも入る」とお気に入りだった。何でも入るからとつい入れすぎると重くなる。「年だから、やっぱり小さいのがいい」と今度はやや小さめのリュックを追加買いした。
「前のはどうしたの」
「メルカリで売った」
「小は大を兼ねないよ、持っておけばいいのに」
「大丈夫、これでいける」
しばらくたって、今度はまた大きいのを背負っている。
「買い直した」
「前のと同じじゃない?」
「そう、同じのがメルカリに出てたからクリックした」
「それって、売ったやつじゃないの?」
「ちがうみたい。同じ型だし、それに新しいから得した気分」
「奥さんは何て言ってる?」
「売ったのも、買い戻したのも、ナイショ。でも知ってるだろうなあ」
都合が悪くなって辞めてもらったけど、また必要だから戻ってもらった。Iさんの気持ちと同じですね。
要らないと言われて辞めさせられて、ほかのところで頑張ってきた。ところが戻ってきてくれという。人も変わったし組織も事業環境も変わった。撚りをもどしてまた一緒にやろうよと今さら言われてもね。なにかいいことあるの?
このリュックの気持ちに対して、Iさんはこう対応したそうです。
「買って、安く売って、買い戻して。1回目よりも今度の方が高かった」
「大は小を兼ねる。出張もこれで行けるし、毎日これで会社に来てるよ」