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モビリティ社会へ、豊田章男さんにエールを

トヨタ自動車の豊田章男社長が職を退く。66歳、まだ若い。次期社長は53歳の執行役員佐藤恒治さん、章男さんが社長になった年齢と同じだ。ずいぶん思い切ったことを、なぜ今、と思った。こんなことが理由じゃないかと想像して、自分で納得した。以下、私見である。

章男さんはリーマンショック直後の2009年に渡辺捷昭さんからバトンを引き継いだ。前年度の営業利益は2.2兆円、それが一転2009年は▼0.5兆円、赤字転落からのスタートだった。以降、固定費の削減と「いいクルマをつくろう」と先頭を切って旗振りをし、業績は急回復。2021年度の営業利益は過去最高の3兆円に手が届くまでになった。経営手腕は推して知るべしだろう。

「トヨタをモビリティカンパニーにフルモデルチェンジする」と社長交代会見で表現した。「モビリティカンパニー」とは、CASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)と呼ばれる従来の自動車とはちがう新しい領域、概念での会社形態、それに変えるということだろうか。

章男さんと同世代の人たちは、この変革を自分の生活に落とし込んだイメージができるのだろうか。

モビリティ社会と言葉では聞くものの、肌感覚ではとらえられない。クルマは走るモノ、人やモノを運ぶもの、クルマの中で生活するわけじゃない。つなぐ、自動化する、シェアする、電動化する、それはいい。電話、カーナビ、ビデオモニター、定速度走行はすでに実用化している。便利になるのはなんとなくわかるが、クルマ以外の自分の生活にどう影響し、どう変わるのか、わたしにはイメージできない。

モビリティカンパニーを具体的にビジネスに落とし込めているのだろうか。章男さんは次世代にバトンタッチするのが妥当だと考えたじゃないだろうか。手にあまるものには口出しをしない。すばらしい経営者だと思う。

トヨタ自動車の課題はEV車対応だ。ハイブリッド車はEVとは認められず、次世代水素エンジンはまだ先。クルマづくりの下請けピラミッドモデルはEV車では通じないかもしれない。それ以上に、自社工場のエンジン部門は不要になる。そんな構造革命をどうやってしのぐか。ハイブリッド車でつないで先送りにしその間に、という余裕がなくなった。

モビリティカンパニーもいいけれど、佐藤さん、目の前のこともよろしくお願いします。