ナイチンゲールと空母遼寧
学校で習ったか、本で読んだかは忘れてしまったけれど、小学生の頃の記憶では「ナイチンゲールは看護婦としてクリミア戦争に参加して、多くの傷病者を献身的に看護した偉い人」だった。
空母「遼寧」は中国が海外から購入した艦体を修理改装して就航させた初めての空母だ。どこの国から買ったかというのは記憶になく、大勢からロシアだろうと思いこんでいた。
このふたつのあいまいな記憶が結びついた。ウクライナだった。
クリミアを舞台とした戦争は、イギリス・フランス・オスマン帝国がロシアとの戦い。ナイチンゲールは1854年から2年間従軍した。この戦争は戦死者よりも病死者の方が上回るという悲惨なもので、ナイチンゲールはトイレ掃除、寝具や包帯の交換と洗濯など衛生面の改善にとりくんだ。その成果を統計的にとらえ、視覚的に一目でわかるように工夫した。イギリスでは献身的な看護よりも統計学の先駆者、統計に基づく医療衛生改革者として評価が高いという。
一方の空母遼寧。1985年にウクライナ・ソビエト社会主義共和国で「ヴァリャーグ」として起工、1988年に進水した。ところが、ソ連邦崩壊で完成を見ず、建造していた黒海造船工場自体が独立したウクライナに接収され、その後スクラップとして売りに出された。2002年、買ったのはマカオの中国系旅遊娯楽公司。海上カジノ船とのうたい文句だったが、マカオではなく大連港に運ばれ、その後大連船舶重工のドックで艤装されて2012年、中国人民解放軍海軍に引き渡された。
ウクライナは日本から遠い。2014年、ロシアのクリミア併合について当時は、正直さほど関心はなかった。今回のウクライナ侵攻でクローズアップした。ナイチンゲールもウクライナ、空母遼寧もウクライナに関係していたことを知った。歴史と地理、掘り返せば思わぬものがでてくるものだ。