山の色づきとサラリーマン
半袖シャツで過ごすのがちょうどいい季節になってきました。もちろん、朝夕は涼しく感じますが、まだ寒くはない。「寒くないですか」と声をかけられますが、「ちょうどいい」は負け惜しみではありません。この時期、山々が色づいてきます。山は都会とちがっていろんな色が混在します。そう、多様性がもとめられるサラリーマン社会を絵に描いたようです。
「GO TOトラベル」が名前をかえた「全国旅行支援」、だれが儲かるのかは知らないけれど、安くなったり、クーポンをくれたりは絶好のチャンス。紅葉を見に三国峠から苗場山へ、スノーシーズンの前に出かけてきました。
都会は、ともすれば単色系です。黄色一色に塗られた都会のイチョウ並木とその落ち葉で埋めつくされた道。お寺の参道の真っ赤なモミジ。統一された木々の色に、美があります。
ゴンドラから見下ろす木々は、単色系じゃなかった。緑もあれば黄も、朱、赤、それに茶と、色のバリエーションがある。人が植えたわけじゃないから木々の種類が混在し、それぞれの色がちがう。
これに加えて、一枚一枚の葉も単色ではない。まだ緑の部分、黄変したところ、赤もあったり、茶色もあったり。これが集合してひとつの木をなしている。
緑は葉緑素の色、つまり光合成に使わない緑光線を反射しているから緑に見える。日照時間が短くなり、気温が下がると光合成の効率が悪くなる。もういらないよと葉緑素の分解が始まる。分解で生じたグルコースは無色なので、もともとあったカロテノイドがそこに顔を出せば黄色になる。同じく、もともとあったアントシアニジンンとグルコースがくっつけばアントシアニンになって赤になる。さらに時間が経てばこれらがタンニンに変化して茶色くなる。
なんか、サラリーマン人生を見ているみたいです。
仕事のしかた、深さ、しつこさ、見切り、あきらめ。同じ人でも、ポジションや処遇、経験と共に色が変わるのを見てきました。とくに、シニアになったとたんに蓄積したタンニンが色をだしてくる人もいる。
理念、ビジョン、行動指針。これで会社を一本化したい。そうすれば、それが強みになる。一方で、人材の多様性、多能性をもとめ、副業まで推奨する。そのうえで、社員のベクトルも合わせたい。いま、このふたつを追おうとしている。
外苑のイチョウ並木と苗場山の雑木林。これを見れば、ふたつは追えない。だって、「美」の価値がちがいます。どだい、無理な話なんじゃないのでしょうか。
半袖シャツの上にウインドブレーカーをはおって、雨になる前の寒風に耐えながら、ゴンドラの中でこんなことを考えていました。