展示会の目的(1):出展はなかみより、人と場所
業界の展示会には毎年出展していた。学会開催と同時で、春は全国大会、秋は地方と年に2回も。技術の進歩や新商品をPRするにはよい機会だとは思いますが、個人的には否定派だった。
狭い業界なので、国内顧客の数はそう多くない。会社とキーマンは大体把握しているので、新しい技術や商品は直接訪問してPRすればよい。展示会場であらためて顧客に説明する必要はなかった。
新しい商談など、展示物の説明からはほとんど生まれてこなかった。説明を求めるのは、学校関係者や他の出展者、競合他社などが大半だった。無駄なのである。
ある年、出展するのを中止した。小間代や展示物製作に費用はかかるし、それ以上に店番の営業員の経費がもったいない。
業界の幹部から電話がかかってきた。
「オタクが出さないと役者がそろわないから困る」
費用対効果が合わないとは言えないので
「ネタがないものですから」
その年はおつき合いで最小の小間を借りてカタログだけ展示し、店番もなし。参加している営業員がときどき見回ることにした。
顧客からは不評でしたね。
「景気が悪いのか?」(心配してくれている)
「顔を見に来たのに居ないじゃないか」(人なんだ)
「待ち合わせ場所がなくなった」(居心地か)
案の定、展示物はどうでもよいようだった。
顧客のいうことは聞かなくてはいけません。
翌年からは展示物を簡略化して空間を大きくし、人と場所を中心に据えての出展に変えました。