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#126『人生を変える!骨ストレッチ』松村卓

 この本には#118『身体から革命を起こす』の甲野善紀氏が出てくる。という訳で、ジャンルとしては「新しい体の使い方」論。もっとも、古くて新しいのだが。
 普通、体のパフォーマンスを高めるというと筋トレやストレッチの方に行きがちである。これは素人でも考えそうなことだが、プロの世界もそうらしい。著者によると、筋トレによって成果が落ちたプロスポーツ選手はかなり多いと言う。
 これについて合点の行く言葉を、イチローから引用している。「(トレーニングで体を大きくすることについて)自分の持って生まれたバランスを崩したらダメ」と。
 なるほどである。
 もっとも私みたいなガリガリは筋肉を付けた方が良い。だから筋トレしている訳だが、ずっとスポーツをやって来た人間には既に相応の筋肉がついている。そしてこれは#99『自分史上最高の身体になる自重筋トレ』に書いてあったことだが、速筋と遅筋の配分は先天的に決まっている。だからイチローのように細身(つまり遅筋多め、速筋少なめ)の人間が、筋肉で重量を増やしたら関節その他に余計な負担がかかることになる。
 イチローくらいだとそういうことが当然の感覚(というか価値観)として分かるようだが、多くのトップアスリートたちはここで間違えて、重量トレーニングを組み込んで、長いスランプに入ってしまう。
 またヨガの先生でも腰とかその他、体があちこち具合の悪い人がいる。それはなぜかと言うと、「部分を柔らかくしても全体が統合されていないから」だと言う。#123『すべては股関節から変わる』に書いてあったが、「股関節が柔らかいだけではダメ。正しい形でないと」と。つまり私なんかは、この数年で柔らかくなったけれど、まだまだ統合に至っていないということがよく分かる。そのつもりで生きないと、何年経っても駄目だ。
 このように筋トレ、ストレッチという、安易に思いつきそうなレベルアップ法は実は功を奏さないことが多く、素人レベルならまだ良いがプロレベルになると致命的な失策にさえなるという出発点から、「ではどうする」と問う。
 そこで出てくるのが体幹になるのだが、そこもそんなに単純な話ではない模様。体幹トレーニングと言っても、体幹がゆるやかでなければいけない。体幹を強くするのは逆効果、と。
 いやはや人間がぶつかる壁はどの方角に向かっても同じである。

 さて以上を踏まえ、まず立ち方を見直す。足の外側のラインが真っ直ぐ前を向くようにする。かなり意外だが、これで重さが力となるそうだ。#123『すべては股関節から変わる』と同様のことを言っている。グイっと押されても、力を入れずとも倒れないという。誰かに押してもらって試したいものである。
 それと手首の関節を優しく包んでぶらぶらことによって、体幹を全体的に起動させるというテクニックがある。確かにこれをすると、可動域が広がるなどのことが起きる。いくつかあって試してみたのだが、私は多分普通の人よりは体幹が使えている方なので、劇的な変化は認められなかった。なお、普通のぶらぶらだと、逆に硬くなることさえあるという。体の取り扱いは非常に難しい。

他に学んだこと
・歩く時、親指ではなく中指を意識せよ。親指はブレーキだから。
・体幹がゆるんでいるのは、背中がやや丸まった状態
・指先や拳であばら骨をごりごりして痛い人は、体幹を使えていない

 身体技術が人生哲学まで限りなく近付いているのを感じる。とても面白い。最近、体の色々な可能性を試したくなってきた。

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