田舎は宝の山。 小さな島でビジネスをする秘訣とは?
岩永さんは宿泊施設「島宿・御縁」を、 橋本さんはトマト農家として「りんたろう ファーム」を立ち上げた。分野は違えど、 島で起業した岩永さんと橋本さん。そんな お二人に、島でのビジネスの様子を伺った。
【語り手】
岩永太陽 長崎県出身/小学2年生で小値賀島に転校
橋本武士 大阪府出身/平成21年に移住
ルーツは小値賀
ー 小値賀に来たきっかけを教えて下さい。
岩永 両親が小値賀出身で、小学校2年生の時に小値賀に転校して来た。一旦島を出てか ら、社会人ではツアーガイドをやっていた。その時にいろんな地方に行き、いろんな宿に泊まって刺激を受けた。母のブログを見て、小値賀が観光に力を入れていることを知って、小値賀で集客したり、海外の人を小値賀に呼べるんじゃないかと思って帰って来た。自分でビジネスをやってみたい気持ちもあった。
橋本 僕は大阪堺市の生まれだけど、ルーツ(両親)が小値賀の大島出身。夏休みは大島に 毎年来てた。ずっと営業の仕事をしてて、晩年は大島で暮らそうって思ってた。大好きな叔父がいて、叔父も大島で暮らすって言ってたんだけど、急に病気で亡くなってしまって。 だいぶ凹んだけど、同時に「今すぐ大島に行こう」って思った。インターネットで調べたら、農業研修制度があるのを知って、嫁さんに相談したら快く承諾してくれた。全然いいよって。いろいろと準備してたら、移住するまでに結局3年ぐらいかかったかな。
キレイごとだけで移住 しない方がいい
ー 島でビジネスをするって実際どうなんでしょう?
岩永 小値賀にはプレーヤーが少ない。逆 に言うと、なんでもビジネスにできると思った。自分のやりたいこともできる。
橋本 ライバルには、これ以上小値賀に来てほしくない(笑)。でもほんと、ここは宝の山やで。
岩永 だから、労働力のためじゃなくて、 生産力をつくるために来てほしい。アルバイトじゃなくて、武ちゃんみたいにトマト をつくるとか、僕みたいに宿をつくるとか。
橋本 そういうビジョンをめちゃくちゃ具体的に描いて実行できる人って案外少ない。海が綺麗とか星が綺麗とか、それだけで田舎に住もうとするのはお勧めしない。
岩永 それで島を出て行った人を何人も見てる。これが現実。だから移住ってビジネスのことも考えて判断した方がいい。
橋本 僕らだって、来月の生活の保障なんてないしね。
幸せは自分次第
ー 実行するのに必要なものは?
橋本 でたでた、ありがちな質問(笑)。それ(実行)を前提に動いてない人がする質問。 僕らはただガムシャラなだけ。
岩永 先のことは考えてない。宿やるにしても、最初は何したらいいかわからないし。 とりあえず何とかなるやろって。図面できてお金借りれたら、やるしかない。リスク取らないと商売できない。
橋本 リスクは大事な要素やね。最悪を想定するんよ。僕の場合は、家がなくなって、 野宿しながら嫁と二人で自給自足を想定した。そうなるつもりはないけど、それも悪くないなって。なら幸せやんって。そこにマインド落とし込んだら、上に行くしかない。身もふたもないけど、今自分が不幸だと思ってる人が小値賀に来たら幸せなれるかっていうとそうじゃない。そこを間違えがち。なんでその人が不幸なのかをその人自身が知ることが重要。あなたが変わらない限りどこに行っても不幸。
岩永 自分のモチベーションとか気持ちが変わらないとね。ただ、移住とか人との出会い は、変わるきっかけにはなると思うよ。 そして、そういう出会いは小値賀にあると思う。
ビジネスっ て人間臭い
ー もう少し普段のお仕事について聞かせてください。
橋本 田舎の人ってビジネスっていう言葉にアレルギー持ってる人も多い。たぶん、一円 でも多くとか、マーケティングとか、そうい うイメージなんだろうけど、僕はビジネスってもっと人間臭いもんだと思ってる。離島は船賃かかるし仕入れも少ないから商品の値段が高くなる。それで仕方ないと思ってたら成長がないでしょ。だから、僕は飲食店に直接 トマトを持っていくようになった。仲介がなければ、飲食店も安くつく。そのとき、僕がやるべきことは質を高くすること。お客さんが、りんたろうファームしか選べなくなる状況をつくる。道でお客さんと会ったら「おー、武ちゃんいつもありがとう!」「おーまいど! お疲れさん!」って。この関係性があればオッケーでしょ。ビジネスは、お客さんとこういう人間関係を育んでいく楽しさがある。もちろん継続しないといけないから、お金の勘定もするよ。でも、電卓たたくのはAIでもできるし、そしたら雇用は生まれない。
岩永 宿の場合は、一人の時間を過ごしたそうなお客さんの空気を読むとか、リピー ターには自転車無料で貸しちゃうとか、お客さんとの関係をつくるのが楽しい。
橋本 単純に嬉しいよね。数ある中から、自分のトマトとか宿を選んでもらえること が。僕たちはは魂込めてやってるから。選んでもらえたらすごい嬉しい。感謝でしかない。
ー そのモチベーションがすごい。
岩永 島に帰ってきた=負けってイメージがあるんよ。そんなことで食っていけるんかって、周りから何回も言われた。絶対にそうじゃない、見返してやるって思ってる。
橋本 心の中心に、普段言語として出てこなくても、自分も時々しか気づかない神経が通ってんのよ。何かパワーの源というか。 仕事続けてると、やってることがなぁなぁになってきたり、ルーティンワークになっ てきて衰退してくると思う。でも、その神経を持ってると立ち戻れる。こんなんじゃいかんって。
岩永 同じことじゃなくて、次のチャレンジをするぞっていう気持ちでやれる。
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