ママの単語を自分に聞かせた時、あの日、恋人と去った冷たいママの瞳を思い出していた。すると、腹の底にくすぶっていた炎が大きくなって、その顔ごと燃やしてしまいたくなるような衝動が湧き上がってきた。
「それにしても、高校生になったばかりだというのに、夜更けまで遊ぶのは感心しないわ」
彼女は、一生懸命ママの代わりを勤めようとしている、そう思った。
「うん、今度から遅くなる時は、連絡するよ」
やっとの思いで、苛立ちの炎が外に漏れないうちに消し止めることができた。僕は、微笑んで頷くことさえできたのだ。
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