水深800メートルのシューベルト|第133話
「へん! 待合室で面倒みてくれたことには礼を言うけどよ、それでこの坊主をどうするかなんてことは、あんたにゃ関係ねえだろ」
(パパが悪態をついた)その時、ママがパパのヨレヨレのシャツを軽く引っ張って、小さな声で注意した。
「少し、オリビアさんの話を聞きましょうよ」
「もし、差し支えなければ、アシェル君を少しの間――あなたが回復されるまで、こちらでお預かりしてもいいと思いまして。いえね……」
何かを言いかけたが、お婆さんは口をつぐんだ。
「ありがたい申し出ですわ。ですが、この子は六歳。こんな小さな子のお世話をするというのは大変なことですよ」
ママは、パパから離れて僕の頭に手をそっと置いた。
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