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水深800メートルのシューベルト|第44話

「ほら、汚れがきれいさっぱり無くなるまで洗って。そうしないと殴られるのはあんただからね」(と、メリンダの声)
 僕は素手で、横がのこぎりの歯のようにギザギザした模様になっているホースを、力を込めてこすった。メリンダはきっと親切で言ってくれているんだ。そう自分に言い聞かせて、力を入れた。外側の汚れを取り終えると、次に内側の泥で細くなった場所に取りかかった。指を入れて、爪で泥をよけ、まだ指を入れる。
 その時、家の外から、「ブロロ……」という車のエンジン音が微かに聞こえた。メリンダの方を振り返ろうとしたが、
「急いで洗って! 準備は早いうちにしておかないと」
 という彼女の声に押されて、水道の蛇口を全開にした。

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