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水深800メートルのシューベルト|第610話

 僕も慌ててボートにしがみつこうとしたが、水鉄砲が顔に直撃してバランスを崩した。足元で踏ん張って倒れまいとしたが遅かった。ザブン! とプールに放り出されて沈んでいくと、一瞬、どうなってもいい、これで少しは休めるだろうと、投げ遣りな気持ちで水が引き寄せるままに体を預けた。耳に水が入って上の世界の音が遠くなり、解放されたような気持ちになった。鼻から水が入ってツンと頭を指すような嫌な感じがしたが、何度も同じ目に遭っているので慣れっこだった。


 しばらく目を閉じて、水面より上の罵声と嘲笑が渦巻く世界から逃れようとした。

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