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水深800メートルのシューベルト|第976話

 セペタが腕時計を見たのを合図に二人で玄関を出た。アパートのエントランスから、キャディラックまでは、傘もささずに走った。エントランスまでトリーシャが見送りに来るかもと思ったが、そうしなかった。フェリックスが再びぐずりそうだったからだ。代わりにアビアナがエントランスに隣接する車止めの屋根のあるところまで見送って手を振っていた。


 僕とセペタは何度か振り向きながら走った。駐車場までの短い間に、たちまちずぶ濡れになった。頭から水滴を滴らせながら、水蒸気でぼやけて見えるアビアナの影に手を振っていた。


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