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水深800メートルのシューベルト|第40話

「うん、外にいるのは僕のパパだよ。君はだれ?」
 暗い所に目が慣れてくると、髪の毛は金色だとはっきりしてきた。指していた指で髪を掻き上げながら、「メリンダ」とかぼそい声で呟いた。
 髪の中から顔が現われ白い肌とそばかすが見えた。変な顔だと思ったら左右の眼の大きさが違っていた。右眼は鈴のように大きく丸いが、左眼は腫れた皮膚の中に埋もれていた。周囲の皮膚は紫色に変色していた。僕はおそるおそる尋ねた。
「パパに、叩かれたの?」
 その問いに、彼女は首を横に振った。

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