水深800メートルのシューベルト|第342話
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夜中になって、ようやく車に乗ることを許された。
車のシートを海水で濡れることを嫌ったメイソンが、服を脱いで車に乗るか、服が乾くまで待つか、どちらかを選べと僕に告げてきたのだ。
僕は後者を選び、車の中には入らず、崖の上のキンモクセイの枝に服をひっかけて風にはためかせ、メイソン、ブライアント、バーナードの三人が車の中でパイプを回して、愉快そうに煙をくゆらせているのを眺めて過ごしていた。
学校に戻ってこられたのは、夜も白んできた頃だった。メイソンが家まで送るかと尋ねたが、断った。この時間に家の近くにいると、夜勤明けのお婆ちゃんと鉢合わせしかねないと思ったのだ。それに、この爆音を鳴らす車をつけると、近所から変な目で見られるかもしれない。そう思った僕は、学校のバス停で降ろしてもらい、バスの始発まで待とうと考えた。