水深800メートルのシューベルト|第617話
横目でエウヘニオの顔を見ながら、自分の頭を空っぽにしようとした。彼の顎先から滴る汗、歯を擦り潰さんばかりに食いしばった口元を見た。
「十八、十九、二十」
しばらくすると、軍曹の靴音が遠くなった。他を見回って怒鳴りに行ったのだ。その隙に、声だけ出して、腕を少しだけ曲げるという仕草で休むことができた。
「馬鹿、ちゃんとやれ」
エウヘニオが半分息だけのかすれたような声で注意してきた。言いたい事はわかったが、腕が機械だと思い込もうとしても、それは僕の命令を聞かなくなっていた。最後の力を振り絞って腕を曲げようとしながら、横目で隣の奴の顔を覗いた。彼は僕を非難めいた目で見つめ返してきた。その口元にある産毛のような髭は、柔らかでくっきりと鼻の下で自己主張をしていたが、あと数年もすればあの警官みたいになるだろう。そう、あのパディソンのように整えられて張りつめた髭に。