「お前らも、笑うことを許可されている時間なのか? 訓練中なのに、ずいぶん余裕があるんだな。俺は貴様たちを甘やかし過ぎたようだ。ようし、全員、その場で腕立て伏せ五十回!」
(教官が命じた。)すると全員が体を伏せて腕立て伏せを始めた。僕も、列に戻ってやろうと立ち上がりかけた。すると、教官の首と細い目は、こちらに向いた。
「聞こえなかったのか? その場で、と言っただろう」
僕は皆からはぐれて一人、いかにも出来の悪い生徒が前で晒しものになっているような気恥しさをおぼえながら、両手と両足のつま先を床につけた。
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