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水深800メートルのシューベルト|第134話

(ママが子どもの面倒をみるのは大変だというと)オリビアさんは、鼻をすすってから、口を開いた。
「うちは、お子さんを預かるには申し分のない環境ですわ。うちには、ちょうど坊やくらいの孫、サイモンが住んでましたのよ。お宅がアシェル君をパパのところで預かっていたように……、サイモンも……、娘が忙しい時には、あの子がうちで何日も泊まっていったものですわ。あの子が使っていたベッドも、そのままありますし、服やおもちゃなんかも……、うっ……、すみません……」
 顔を手で覆って泣き始めたお婆さんに、ママは同情するように言った。
亡くなったパストアウェイのですか、お気の毒に……」
「いえあの子は産まれた時から病気がちでしたし……、悲しむ間もなくアシェル君がこのような困った状態でいるというのは、神様の御意志だと思いますのよ。サイモンの代わりにアシェル君を助けなさいと。それでね、ジュリアさんでしたっけ。ご主人の容態が良くなるまで、いえ、二三日の間だけでも、この子を預からせてもらえれば、立派にお世話しますし、私の慰めにもなりますわ。ねえ、坊や?」

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