水深800メートルのシューベルト|第373話
彼らは何か旨い仕事を始めるでもなく、そんなことばかり(街をさまよい、大麻を吸うこと)をしていた。
メイソンは、自分の家族に僕らを会わせたくないのか、決して家に招待しようとはしなかった。ある日彼は、
「兄貴はキレたら、俺でも止められないんだ」
と言って、紫に変色した唇の間から、欠けた前歯を見せてきた。
一度その生々しい歯ぐきにしがみつく尖った残骸を見せつけられると、メイソンの家の恐ろしさが推し量られ、彼の父親の風変わりな姿も思い出されたことも相成って、誰も彼の家に行ってみたいなどとは言い出さなくなった。
そんなわけで、僕らはいつも街のあちこちをさまよっていた。