水深800メートルのシューベルト|第557話
僕は、これから始まる午後の授業に出る気をなくしたので、校舎を抜けて表の敷地に出た。
雲の切れ間から、太陽の光が射し込んできた。学生のグループがその陽気に浮かれて、甲高い声でおしゃべりをしていた。僕は、モニカおばさんの死体を運んでしまった。二度と太陽の下であのような声ではしゃぐことは許されないかもしれない。
葉が生い茂った木の根元で、カーキ色の海軍の軍服姿の男が寝転んでいる姿を見た。顔に制帽を乗せいているが、きっとナージフさんだろう。なんて幸福そうなんだ。少し前までは、毎日退屈そうにしていると思っていたが、僕のしたことがなかったことになり、メイソンも許してくれるなら、そんな彼の立場と代わって欲しいとさえ思えてきた。