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水深800メートルのシューベルト|第335話

 引っ張られる背中を支点に、体はジャックナイフのように折り畳まれていた。頑張って力のかかる方向に顔を向けると、水の上から照らすオレンジの光が見えてきた。早く水面に上がりたくて、残った力で目一杯足を動かした。


 何分水に潜っていたのだろう? 久し振りに水と混じった空気が肺に届いた。僕は、咳き込みながら、貪るように何度も新鮮な空気を味わった。


 僕の背中は、ぐいと引っ張られては一旦休み、すぐに強い力で引っ張られていた。あえぎながら空気を取り込んでいると、今度は口や鼻に入って来る海水が鬱陶しくて、何度も咳き込んだ。

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