彼女は、低い声で脅すように続けた。
「アシェルは、メイシーをここに呼んですぐに帰った。家のドアの前で話をしただけで、家の中にも入っていない。いいわね!」
あの恐ろしい血だまりを忘れろと言うのは無理だと思ったが、僕は黙って頷いた。
「今なら、まだ最終のバスに間に合うわ、行きなさい」
メリンダは冷たくそう言ったが、表情は残酷なそれではなく、強張っているようだった。それは、泣くのを我慢している時の顔かもしれない。そう思うと、彼女の心の中がさっぱりわからなくなって混乱した。しかし、彼女は銃口を僕に向けたままでいるので一歩一歩と後ずさりするしかなかった。
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