水深800メートルのシューベルト|第737話
「アシェル、馬鹿、こっちだ」
隣のベッドから小声で窘める声がした。改めて声のするベッドに行くと、一番下の段のダカーリのベッドは、おそらく彼が梯子に背を向けて横になっていて、その一段上には、エウヘニオが上半身を起こして、にやりと暗闇の中で歯を見せていた。
一番上にある自分のベッドまで上っている途中、彼は梯子にかけたままのふくらはぎを軽く叩いてきた。上り切って、折り畳まれたシーツと毛布を広げると、エウヘニオが再び小声で話しかけてきた。
「終わったらさっさと来いよ。あの女とのランニングは楽しめたかい?」
含み笑いの声が漏れているのを聞き取り、少し不愉快に思った。