「俺はもうすぐ死ぬんだってよ。あのマクレインとかいう医者が、平然とぬかしやがったんだよ」
パパの泣いているところを初めてみたので、僕は涙の行く末を思わずじっと見つめた。目からこぼれて頬を伝わった涙は、光にキラリと一瞬照らされて、髭の中へと吸い込まれてその役目を終えているようだった。
「検査しないとわからないけどとも言っていたでしょ? あくまで可能性の話よ。お医者さんは、万が一に起きた事に責任を取りたくないから、ああ言っただけよ」
ママもちょっぴり怒っているような言い方をした。
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