水深800メートルのシューベルト|第398話
「ほら、吸えよ」
手渡された芋虫から、あの焚き火のような変な臭いがしてきた。
「嫌だよ、この前も気持ち悪くなったし……」
どうしてこれを吸うといい気分になるのかわからず、隣のまだ幸せそうなバーナードの顔を見た。
「なんだ、お前パイプを返そうとしてるのか? いいから吸ってみろよ。これが大人になるってことだよ。初めはバッドトリップで苦しくても、段々と慣れて気分がよくなるからさ。俺たちはみんなそうやって乗り越えてきたんだ。ここで、頑張らないとな」
バーナードは、窘めるように言った。
「そうだぞ。それに、俺が金を出してやって、ブライアントが手に入れてきたウィードが吸えないっていうのか? ああ、勿体ない。こうしてお前がグダグダ言っている間にも、煙が逃げちまう」
メイソンは、シートに手をかけてこちらを向き、立ち上る煙を惜しむように、手で自分の顔へとあおいだ。