こちらを見ないで冷淡な調子で言った。
「いいから行きなさい。用事は済んだでしょう? くれぐれも、犯罪はもうしないでね。あなたの養育者に迷惑をかけないでね」
街路樹に守られるようにして停めてあった車に、ラスウェルさんと僕は乗り込んだ。エンジンが咆哮し、カタカタと震えだすと、車はゆったりと発進した。
僕は何も言わずに、八角形の建物がサイドミラーの中で小さくなっていくのを眺めてため息をついた。
「いや、悪かったな。君を悪人のように言ったりして」
ラスウェルさんは、僕を気遣うように首を微かに動かし、すぐに戻して前方を見つめて言った。
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