車の周囲に警官がいないことをひとしきり確かめると、車に視線を戻した。外からは何をしているのかがわからないように、バーナードは窓の下に姿勢を低くしていて、頭だけが見えた。
僕は、以前メイソンに言われていた、見張りだと周囲に思われないよう車から少し離れろという指示を思い出し、すっかり暗くなって、街灯がまばらに照らす歩道の敷石を踏みしめながら、ポケットに手を突っ込んだ。
目先にある行き止まりの壁には古い煉瓦を貼り合わせたようになっていて、上半身裸に東洋のカンフーの達人らしき男と、緑の竜が薄暗い中、ぼんやりと並んで浮かんでいた。
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