水深800メートルのシューベルト|第463話
「いや、このショッピングビル、上がアパートメントになっているんだなって。映画館もある建物なのに」
僕は、本当に聞きたいことを質問できなかった。しかし、彼女は僕が思っていたより大人だった。
「そうよ。知らない? ここに住んでいる人は、いつでも服を買ったり映画を楽しめたりするのよ。近いから便利ね。アシェルは森にいたから、こんな街は気に入らないかもと思ったんだけど。それに私たち、一度会ったきりだし……、来なきゃよかった?」
彼女の気弱な顔に、僕は慌てて言った。
「そんなことないよ。こんなショッピングビルとアパートメントが一緒になっているのが珍しかっただけさ」
それは本当だった。