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水深800メートルのシューベルト|第1109話

「現実は極めて厳しい状況ですよ。今、幸福にはなれませんよ」
 僕は反論した。


「そうかもしれませんが、君は死ぬまで『ああ、助かるんだろうか、助からないのだろうか』と思い悩みながら過ごすつもりですか?『過去を憂うな、未来を願うな』ですよ」
 大尉はうんざりと言った調子で言った。
「おっしゃりたい事は理解しますが、いつ呼吸ができなくなるか見通せない中で、それ以外の事なんて考えられませんって」


「尚更ですよ。残り時間が短いと意識すればこそ、時間は大切に使わないと」
「大切に? 僕にできる仕事はありませんし、一緒に過ごすべき家族もいない状況で、ですか?」
 僕は、この狭い艦内で気を紛らわせる事の難しさをよく知っていた。


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