「いけませんよ」
オリビアさん(待合ホールで出会ったお婆さん)は穏やかだが、少したしなめるような口調だった。
「ご主人が大変な状態にあることには同情しますわ。でもね……」
そう言いかけるのをママは止めた。
「失礼ですが……」
ママの疲れて窪んだ眼には苛立ちが隠れているのが分かった。
僕のせいで……、そう思いながら、どうしたらいいか分からず二人の顔を交互に見比べていると、右のまぶたがピクピクと震えてきた。
「うちの事情に首を突っ込まないでいただけます?」
ママのピシャリとした声にびっくりして、ますますまぶたが別の生き物になったように動いて止まらなくなった。
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