水深800メートルのシューベルト|第674話
その時(僕が転倒した時)、何人かの男女の笑い声が後ろで漏れていた。僕は恥ずかしくなって顔が火照り、慌てて立ち上がったが、足がもつれてまた転んでしまった。今度はさっきよりも大きな嘲笑を浴びることになった。
すると、近くに立っていた教官の一人が怒鳴った。
「アシェル・スコット、またお前か。転ばずに走ることもできんのか?」
すると、笑い声がますます大きくなった。教官は、今度は刺すような視線を訓練生の集団に向けた。
「お前らも、笑うことを許可されている時間なのか? 訓練中なのに、ずいぶん余裕があるんだな。俺は貴様たちを甘やかし過ぎたようだ。ようし、全員、その場で腕立て伏せ五十回!」
すると全員が体を伏せて腕立て伏せを始めた。僕も、列に戻ってやろうと立ち上がりかけた。すると、教官の首と細い目は、こちらに向いた。