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水深800メートルのシューベルト|第101話

「彼は助かるんですよね?」
 ママは詰めよるように、背の高い先生を見上げていた。先生は、手で鼻をこすった。
「まず、申し上げておきたいのは、状況は厳しい上に判断が難しいと……硬化療法……を勧めたのですが、それを患者さんは拒否をしておられまして。……などの採血をして調べたいのですが……、それも拒否されまして……。書類にサインをしていただけません。ご本人は『帰る』の一点張りでして。私どもの立場からすると、肝臓の……ステージは……と推測されまして……、……と……の検査だけは実施しないと……。今の状態は憶測で話しているだけなのですが……」
 先生はそこで一旦言葉を切った。悪いことでもしたように、言いにくそうな顔をした。

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