彼女は僕らを気にかけていないのか、こちらを見ずに自分の爪を見ていた。しかし、顔を上げて僕らを見ると目が鋭くなった。
射すくめられるような視線に、すっかり恥ずかしくなってしまい、僕は下を向いた。後ろから、ドンと誰かがぶつかり、前につんのめった。小さく怒りのこもったメイソンの声が耳に刺さった。
「急に止まるんじゃねえよ、馬鹿」
前に転んだ衝撃で、治りかけためまいが再び起こり、周囲の景色が歪んだ。ログハウスの後ろに見える木々が、昔見たセコイアの森のように鬱蒼としている気がした。
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