水深800メートルのシューベルト|第184話
「坊や、遅くなっちゃった」
日がすっかり顔を出してから、オリビアさんは細長い荷物を抱えて嬉しそうな顔をした。
「いいことあったの?」
「アシェルにお土産あるのよ。お店が開くのを待っていたの、後で開けましょ」
オリビアさんは昨日の子守歌を鼻歌で歌っていた。
「それと、いいお知らせよ。アシェルのママがもうすぐ会いに来るって」
「本当? いつ頃?」
「夕方よ。夜中に電話があったの。だから、帰ることになったらあのお土産はプレゼントするわ」
僕はコーンフレークを掬っているオリビアさんをちらとみた。ちょっぴり寂しそうにしているので、胸がチクチクした。
「僕が帰っても、また遊びに来てもいい?」
「ええ勿論よ。いつでもいらっしゃい。ママが仕事で忙しい時なんかは」
僕は、お婆さんの嬉しそうな顔をしたので安心して自分の朝食を啜った。