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水深800メートルのシューベルト|第104話

「アシェル、あなたはここで待っていてね」
 ママは僕の肩を押して座らせようとすると、オリビアさんを一目見た。お婆さんは「私がそばで見ていますわ、ええ、この子はママが来るまでとてもいい子で……」と、穏やかな調子だった。
 ママと先生が背中を見せた時、ホールの向こうからペチペチと、低いが荒々しいリズムの足音と、それを追いかける女の人の叫ぶような咎めるような声が聞こえてきた。
「……ます。困ります! まだ動いては……」

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