水深800メートルのシューベルト|第127話
(パパはポケットの紙を破ってガラス戸に投げつけたが)紙片は扉に届くどころか、パパの真上で花が咲いた様にぱあっと広がり、何かの賞に選ばれた人のように、全身を包みながらゆっくりと舞い落ちていた。でも、何かおめでたいことに当たった人とは違って、パパは息を荒くしたままで、ガラスの向こうの人に悪態をついていた。
ママが、ガラスを見ているパパの前に立ち、僕たちの方へとずりずりと押してきた。
「畜生! 覚えていやがれ! お前らだって、あの藪医者にぼったくられたら、わかるだろうよ」
「ジョーンズ。もう喋らないで。アシェルがずっと待っていたのよ」
とママはなだめるように言った。