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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2023年9月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第684話

「私、笑っていません」  女の声が聞こえたので、少し頭を傾けて覗くと、最前列でさっき駆け…

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水深800メートルのシューベルト|第683話

「おい! 今笑った奴は誰だ」  教官が、手を後ろに組んで細い目の端を尖らせ、隊列の一人一…

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水深800メートルのシューベルト|第682話

彼女は教官にロープを結び終えたことを告げると、何事もなかったかのように列の先頭に戻った。…

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水深800メートルのシューベルト|第681話

「ようし、係留しろ!」  教官の声にはじかれたように、ロープを持ってボラードのところへ戻…

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水深800メートルのシューベルト|第680話

 「ほら、引け!」 「ウーラー!」  教官の合図に従って、両足を広げて踏ん張り、ロープを持…

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水深800メートルのシューベルト|第679話

  僕が列の並んでいる訓練生の前を通ると、銘々が手を伸ばしてロープを掴み後方へと送ってい…

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水深800メートルのシューベルト|第678話

 しかし、教官はそれを見逃してはくれなかった。 「おい、お前ら、早く立て。やる気はどうした? 目が死んでいるぞ」  列から僕に目を移すと、恐ろしい表情で睨みつけながら、乱暴に僕の脇に手を入れて強引に引っ張り上げてきた。勢いに任せて立ち上がったが、まだ足がフラフラしていた。 「お前がきっかけで、腕立て伏せになったのだから、真っ先に立ち上がらなきゃ始まらんだろう」 「はい、アシェル・スコットは列に戻ります!」  二三歩戻って、すぐにロープを忘れていたことを思い出し、戻ってそれを

水深800メートルのシューベルト|第677話

 地獄の五十回が終わった。みんな、午前の時とは違って、終わってすぐに立ち上がる者は少数だ…

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水深800メートルのシューベルト|第676話

午前の訓練で、腕が使い物にならないくらい疲れたと思っていたが、ちょっと曲げるくらいなら簡…

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水深800メートルのシューベルト|第675話

「お前らも、笑うことを許可されている時間なのか? 訓練中なのに、ずいぶん余裕があるんだな…

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水深800メートルのシューベルト|第674話

その時(僕が転倒した時)、何人かの男女の笑い声が後ろで漏れていた。僕は恥ずかしくなって顔…

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水深800メートルのシューベルト|第673話

 最後はデッキの上で、止まって整列し、その場で激しく足踏みをして、ようやくランニングの時…

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水深800メートルのシューベルト|第671話

 この日の午後は訓練用艦船の上に集められた。体育館なんかより遥かに広いドームの中に、無理…

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水深800メートルのシューベルト|第670話

「じゃあ、ギャングで悪事を重ねていたのは本当なのか?」  また、胸がチクリと痛んだ。嘘をつこうかと迷ったが、ここは、正直に言った方が楽なように思えた。 「うん、友だちが入っていたから、僕も入らなきゃと思って……」 「アシェルってそういう奴なんだ」  どういう意味だろう? そう思ったが問い質す勇気はなかった。エウヘニオの憐れむような眼が、答えのような気がした。 「気にするな。ダカーリには嫌われているようだが、みんな訓練がきつくていらいらしているのさ」  そういうと、彼は食器