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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2023年2月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第470話

「いいわよ、アシェルには私の大変さはまだわからないのよ。仕事と住む所がなければ、生きてい…

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水深800メートルのシューベルト|第469話

彼女は、軽蔑したような目をして、ため息をついた。 「アシェル、君はまだ子どもだからわから…

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水深800メートルのシューベルト|第468話

あきらかに、映画館のほの暗い中で青白い光を浴びて笑みを浮かべていたメリンダとは、別の人間…

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水深800メートルのシューベルト|第467話

(僕は、名前を変えなかった理由をメリンダのためのように言ったが)実際は、名前を変えると、…

3

水深800メートルのシューベルト|第466話

 未来の超能力SF映画を観た後、僕らは下の店でピザを食べた。 「どこまでも伸びるよね、さ…

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水深800メートルのシューベルト|第465話

時が止まったように沈黙が流れると、彼女は大きく息を吸い、元の笑顔に戻して言った。 「何で…

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水深800メートルのシューベルト|第464話

二階のショッピングゾーンから放たれるオレンジの光とそこから漏れるざわめきが、同じ建物の高層階から見える無機質な窓や人影と合っていないように見えたのだ。 「それに、あの時、メリンダのことをよく知らないまま、君は行っちゃったから、気になってたんだ。あのお母さん、怖そうだったし。でも、僕の方でもパパが怒っちゃって、その後倒れて、そっちの心配もしなくちゃならなかったし」  僕は、メリンダとの距離が近いことに困惑し、言い訳ばかりしていて、嫌になった。 「君、五六歳だったんでしょう?

水深800メートルのシューベルト|第463話

「いや、このショッピングビル、上がアパートメントになっているんだなって。映画館もある建物…

4

水深800メートルのシューベルト|第462話

 遊歩道を歩きながら、どこまでも道沿いに続いて建っているビルの二階のシェードから漏れるオ…

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水深800メートルのシューベルト|第461話

 お婆ちゃんに買ってもらったばかりのスマホを開くと、メリンダからのメッセージが入っていた…

3

水深800メートルのシューベルト|第460話

 彼女と何を話せばいいのだろう。そんなことを考えているうちに、バスはエメリービルで僕を降…

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水深800メートルのシューベルト|第459話

開いた窓から焼けたエンジンの臭いに混じって花の香りが鼻の奥に広がった。外にはキンボウゲの…

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水深800メートルのシューベルト|第458話

 揺れるバスの中で、何もデートの場所をこんな二人とも馴染みのない場所にしなくてもよかった…

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水深800メートルのシューベルト|第457話

「君のボスに何て説明しようか? 『アシェルはとっても良かったわよ』とでも言う? そしたら、あいつも私を買うかもね」  無邪気な声ではしゃぐ彼女を、殴りつけたい衝動に駆られた。しかし、車を停めてある廃工場の跡が見えたので、足早にそこに向かった。からかうような「ピーピー」という口笛の音に、僕は真っ赤になって下を向いて、車のドアを開けた。      (28)  冬学期が終わって、春休みになった。僕は、バスのガソリンの臭いの間に混じった若葉の香りを感じ取った。 寒気と湿気に悩まされ