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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2022年11月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第380話

 竜の口元から長く伸びた二本のヒゲのうち、男とは反対側にある方に、黒くて短いスカートの女…

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水深800メートルのシューベルト|第379話

 車の周囲に警官がいないことをひとしきり確かめると、車に視線を戻した。外からは何をしてい…

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水深800メートルのシューベルト|第378話

「早く吸えよ」  メイソンに急かされて、バーナードはパイプに食いついた。大きく吸っては、…

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水深800メートルのシューベルト|第377話

 メイソンは、リボルバー式のグリップをバーナードに握らせた。受けとる手は微かに震えていた…

4

水深800メートルのシューベルト|第376話

 チャイナタウンに入り、石が敷き詰められた狭い道路を進んで、メイソンは、廃車や割れた窓ガ…

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水深800メートルのシューベルト|第375話

 メイソンとブライアントが夜の街で、ミドルスクールやハイスクールの生徒を相手に金をせびっ…

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水深800メートルのシューベルト|第374話

 この日は、いつもの四人でチャイナタウンに行こうという話になった。日が暮れかけた頃に、僕とバーナードは車の後ろに座り、ブライアントは慣れた手つきで芋虫に葉っぱを詰めていた。道中、メイソンはダッシュボードのボックスを開けて、鈍色の拳銃をちらっと見せた。ルームミラー越しに彼は顔を紅潮させていた。 「こいつを家からこっそり持ってきたぜ」 「おい、今日やるのか?」  助手席のブライアントの声は興奮でうわずっていた。  きっと噂にきいた「カツアゲ」をするつもりなんだ。そう思うと背中

水深800メートルのシューベルト|第373話

彼らは何か旨い仕事を始めるでもなく、そんなことばかり(街をさまよい、大麻を吸うこと)をし…

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水深800メートルのシューベルト|第372話

       (26)  十二月になり、秋学期が終わって冬休みになった。  僕は、前から…

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水深800メートルのシューベルト|第371話

 体はナージフさんが持っていたボロ布のようなのに、頭だけは考えるのを止められなかった。長…

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水深800メートルのシューベルト|第370話

不思議なことに、笑顔を作ると、苛立ちはお腹の底に小さく沈み、理由もなく楽しいような気分に…

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水深800メートルのシューベルト|第369話

「アシェル、会計士になるために大学へ行くんでしょ? それだったら……」(と、お婆ちゃんは…

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水深800メートルのシューベルト|第368話

 ママの単語を自分に聞かせた時、あの日、恋人と去った冷たいママの瞳を思い出していた。する…

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水深800メートルのシューベルト|第367話

「本当に泳いだだけなのね。それにしても危ないわ。毎年多くの子どもが海で亡くなっているのよ。それに都会の海は汚れているわ」(とお婆ちゃんが言った。) 「それくらいわかっているよ! 僕を子ども扱いしないでよ、お婆ちゃん。海で泳ぐくらい、教わればできるって」 「それに大人がついていないのに、海へ行くなんて……」  お婆ちゃんは、まだ心配そうだった。 「平気だよ。僕は、小さい時からトレーラーハウスに一人で泊まったこともあるって知ってるだろ? ママもパパもいなくても過ごせたんだよ」