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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2022年3月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第136話

 ママが僕を褒めてくれたのが嬉しくて、にこにこと笑ってママの顔を見た。しかし、ママは僕に…

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水深800メートルのシューベルト|第135話

 オリビアさんは、僕の手を握ったまま、しゃがんで僕の目を覗きこんだ。 「ママはお仕事だし…

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水深800メートルのシューベルト|第134話

(ママが子どもの面倒をみるのは大変だというと)オリビアさんは、鼻をすすってから、口を開い…

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水深800メートルのシューベルト|第133話

「へん! 待合室で面倒みてくれたことには礼を言うけどよ、それでこの坊主をどうするかなんて…

3

水深800メートルのシューベルト|第132話

(僕の手を引っ張るもう一本の手は)皺だらけの手だった。僕が、反対方向に引っ張り合う二本の…

3

水深800メートルのシューベルト|第131話

「俺にはわかるんだ。いつも二日酔いみてえに気持ち悪くてよ。頭もぼんやりするし、変な物が見…

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水深800メートルのシューベルト|第130話

「俺はもうすぐ死ぬんだってよ。あのマクレインとかいう医者が、平然とぬかしやがったんだよ」  パパの泣いているところを初めてみたので、僕は涙の行く末を思わずじっと見つめた。目からこぼれて頬を伝わった涙は、光にキラリと一瞬照らされて、髭の中へと吸い込まれてその役目を終えているようだった。 「検査しないとわからないけどとも言っていたでしょ? あくまで可能性の話よ。お医者さんは、万が一に起きた事に責任を取りたくないから、ああ言っただけよ」  ママもちょっぴり怒っているような言い方をし

水深800メートルのシューベルト|第129話

(僕はお酒を注意したと二人に伝えたが)でも、パパもママも一向に僕の言うことが耳に入ってい…

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水深800メートルのシューベルト|第128話

 パパは僕たちの傍に来ると、眩しそうに目を細めて見下ろしてきた。顔が朝日を浴びてオレンジ…

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水深800メートルのシューベルト|第127話

(パパはポケットの紙を破ってガラス戸に投げつけたが)紙片は扉に届くどころか、パパの真上で…

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水深800メートルのシューベルト|第126話

 車椅子は開いた扉を通過した途端に止まり、パパは両手を手すりで支えながら立ち上がった。 …

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水深800メートルのシューベルト|第125話

 後ろで病院のガラスの扉が開く音がした。  出てきたのは、お巡りさんのような制服を着たお…

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水深800メートルのシューベルト|第124話

 (オリビアさんの質問に困った僕は)黙ったままにっこりとした顔を見せると、オリビアさんは…

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水深800メートルのシューベルト|第123話

 オリビアさんは、僕の返事を待っているのかずっと黙っていた。喋らずにいるのが気まずいのか、握っていた手がプルプルと震えているのが伝わった。こっそり顔を見上げてみると、時折鼻をすすりながら星空をずっと見つめていた。  しばらくしてようやくオリビアさんと目が合った。 「ねえ、坊やのパパは、ご機嫌が悪かったわね? あなたも、パパに叱られたりするの?」  僕はどう答えていいかで困ってしまった。この人が、パパやママに言いつけるかもしれないと思うと怖かった。でも、ママと「嘘をつかない」と