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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2022年2月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第105話

 ペチペチという足音が大きくなりこちらに近づいてきた。僕は怯えてママの背中の服を引っ張り…

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水深800メートルのシューベルト|第104話

「アシェル、あなたはここで待っていてね」  ママは僕の肩を押して座らせようとすると、オリ…

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水深800メートルのシューベルト|第103話

「検査が一切できない状況では、私だって何も言えないんですよ。医者だって魔法使いじゃないん…

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水深800メートルのシューベルト|第102話

「申し上げにくいのですが……、ジョーンズさんは医療保険には加入してらっしゃらないのですよ…

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水深800メートルのシューベルト|第101話

「彼は助かるんですよね?」  ママは詰めよるように、背の高い先生を見上げていた。先生は、…

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水深800メートルのシューベルト|第100話

「それで、ジョーンズは回復したのですよね?」  ママは心配そうに訊ねた。ドューク先生は言…

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水深800メートルのシューベルト|第99話

 (男の人が「ジョーンズ・スコットさんですか」と呼びかけたので)パパの名前だ、そう思った僕は立ち上がった。座っているとお尻が痛むのでいいきっかけになった。ママもオリビアさんから目を逸らして、男の人に声で反応していた。 「初めまして、救急救命医のマクレイン、デューク・マクレインです。ジョーンズさんのご家族ですか?」  その人は顔の彫が深く、鼻筋が通っていたので強そうだったが、口の周りにはパパ程ではないけれど、口髭が乱れて生えていたので、疲れているんだと思った。 「え、ええ。か、

水深800メートルのシューベルト|第98話

(ママがピシャリと言い返したので)お婆さんは口をつぐみ、代わりに僕の肩を守るように手を置…

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水深800メートルのシューベルト|第97話

「いけませんよ」  オリビアさん(待合ホールで出会ったお婆さん)は穏やかだが、少したしな…

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水深800メートルのシューベルト|第96話

 (ママが大きな声を出したので)僕はびっくりして、口をつぐんだ。でも、ちゃんと説明しなき…

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水深800メートルのシューベルト|第95話

「ねえ、僕はパパに『お酒飲んじゃいけない』って、言ったよ」  後で、ママに「どうしてパパ…

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水深800メートルのシューベルト|第94話

 ママは(僕が車の機械に息を吹いて、パパの車が動くようにしていたことを知ると)肩をすくめ…

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水深800メートルのシューベルト|第93話

「アシェル。あの車はね、お酒の臭いがする人が運転しようとしても動かないのよ。本当のことを…

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水深800メートルのシューベルト|第92話

「知らないよ。夜は一人で寝てたんだもん、トレーラーで」(と、パパが夜にお酒を飲んでいなかったかというママの質問に、僕はこう答えた。) 「ママをからかわないで」  ママは僕の手を握る手の力を強めたので、思わず「ヒッ」と声が出た。 「本当だよ。パパ、夜帰ってこなかったんだもの」  ママはそれを聞いて驚いたような顔をした。 「本当……? だとしたら、誰かパパを連れて行ったの?」  僕は首を振った。 「一人で車に乗って出かけたんだよ。黄緑色の車で」  ママは口元に手を当てて、しばし考