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X-T5と僕
X-T5は完璧な写真機である、と思う。
しかし、この完璧さが僕には合わなかった。
使いこなせなかった、の方が正しいのかもしれない。
購入した当初は、初めて手にした富士フイルムのカメラであり、かつ最新機種ということもあり、これからずっと一緒に過ごしていくカメラになるに違いないと思っていた。
僕のカメラ遍歴は、フィルムカメラ(OLYMPUS OM-1、CANON AUTOBOY Sⅱ、MINOLTA SR-T101等)、デジタルカメラではEOS Kiss X9、SONY α7Ⅲを使用してきた。
もともと富士フイルムの色味が好みだったが、α7Ⅲを購入した当初(2020年初め頃)はフルサイズの魅力の方がそれを上回っていた。やはり流石はフルサイズ、どんなものでも逃さず思うように撮影できていたし満足していた。ただ1つの不満を除けば…。
それは、「色味」である。
α7Ⅲの撮って出しの色味が、まったく好みでなかったのだ。ただ、レタッチありきのカメラだということは色々な方のレビューで拝見していたので、しょうがないと割り切ってレタッチを頑張ることにした。
そして、レタッチの数をこなすにつれて、分かってきたことがあった。僕のカメラライフがフィルムから始まったこともあってか、写真の色味や質感をフィルム風に編集することを好む傾向にあるということである。
もっと言えば、富士フイルムの色味を再現しようとしていた。
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しかし、自分が何時間もかけてレタッチをして「富士フイルム風」に仕上げた写真と、友人がX-S10やX-T30で撮った写真はまったく別物であり、僕の好みは圧倒的に後者の方であった。
となると、やはり脳裏によぎるのは富士フイルムへのマウント移行である。
何度もカメラ屋さんに足を運んでは、X-Pro3やX-T5、X-H2などと触れ合った。
その中でも、チルト式や速いAFなど、僕が求める条件を全て網羅していたX-T5に惹かれていった。
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そして遂に、7月の末、念願のX-T5を手に入れることができた。
なんとレンズより先にボディが届いたので、アダプターを買ってsuper takumar 55mm f1.8で何枚か撮ってみた。
※下の写真は全て撮って出しで、フィルムシミュレーションはクラシックネガを使用。
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求めていた色味や質感が、そこにはあった。
ファインダーを覗いた瞬間にパッと世界が明るくなるような画作りには、語彙力が無くなるほどの感動を覚えた。
センサーサイズの壁を超えた階調表現を生み出しているのは、やはり4020万画素という高画素によるものなのだろうか。
他にも、速いAFや連写性能、手ブレ補正は様々な用途において役に立った。
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ライブ撮影や小さい子供相手、ポートレート、旅先での記録など、このカメラに撮れないものは無い。
そう、本当に無いのだ。
しかし、このカメラで写真を撮っていくうちに「何でも撮れてしまうカメラ」に対して、何か物足りない…と違和感を覚えるようになっていったのである。
確かに、X-T5は4020万画素のおかげで、これまでに無いほどの解像度を得ることができた。
ただ、僕個人の感覚としては、Xシリーズが引き継いできた色再現性は、2400万画素程度の土俵に留めておくべきだったと思う。
更に言うと、4020万画素になったことにより、XシリーズでもGFXシリーズでも無い、別ジャンルになってしまったという感覚がある。
両シリーズを簡単にまとめてしまうと、
Xシリーズは軽量・コンパクト、GFXシリーズは空気までも写す解像感・階調表現、がウリである。
今回、X-T5が4020万画素という高解像度を実現したことにより、XシリーズがGFXシリーズに近づくという現象が起きた。
しかし、両者にはセンサーサイズという大きな差が存在する。XシリーズのAPS-Cに対し、GFXシリーズのラージフォーマットは約4倍の面積がある。
この差は、Xシリーズをどれだけ高画素化しても埋めることができない。
たぶん、僕が違和感を覚えたのはここだと思う。
これまでのXシリーズは良くも悪くもフィルムライクな写りであった。素晴らしい色再現に、程よい解像感が心地良さを感じさせていたのだと思う。
それが今回の高画素化によって崩れてしまった。
写しすぎるがゆえに、写せないもの(=空気感)との乖離が大きくなってしまったと言えるだろう。
XにもGFXにもなれないところでフワフワと浮いてしまっているように感じるのだ。
Xシリーズの第4世代までのカメラやGFXで撮影された写真を見れば、僕の言いたいことが何となくわかるかもしれない。
それでも、X-T5は最高の写真機であることに変わりはない。
思わず手に取りたくなるようなルックス、素晴らしいEVFにディスプレイ、病みつきになるシャッターフィーリング…。
ずっと僕の相棒でいてほしい存在だったが、違和感が大きくなるにつれて気持ちも離れてしまった。
次に僕が狙っているのは、程よいバランスで趣味性の高い X-Proシリーズか、X-T5では辿り着けなかった、空気感をも写すことのできるGFXシリーズである。
相棒探しって難しいものですね(*^^*)