2022-2023 山梨クィーンビーズ
今シーズンは、伊與田HCから金子HCに代わり、メンバーも半分以上変更となった新生・山梨クィーンビーズ。終わってみれば、5勝21敗という結果で、選手、ファンにとっては悔しい結果になった。
ただ厳しい言い方になるが、正直、プレイオフに進出した8位までのチームと、9位以下のチームには、大きな実力差が開いてしまった。実力差というより、実力のある長身の選手を獲得できているかの差といいますか。それと、ディフェンス力の差。そろそろ選手獲得の方法を考える時期にきているのか。
さて、その山梨クィーンビーズは、もちろん小さいチームの代表格のようなチームで、今回は「人とボールが動く」機動力を使ったバスケを展開した。オータムカップや開幕当初は、速くボールが動き、人もくるくると動くバスケで、観ている人をワクワクさせた。ただあまりにもハードワークなので、2日目には機動力が落ちたり、ディフェンスで粘れなかったりという欠点が出てきた。しかも時が経つにつれ、相手チームにも研究され、オフェンスも上手くいかない時期もありました。
そんな苦しい時期に、光を与えてくれたのは、やはり富士通戦ではないでしょうか。11月5日、Game1は、58対77で敗戦。Game2は疲れが残り敗戦してしまうんではないかと思いきや、66対65、わずか1点差で勝利!もちろん富士通もチーム状態がよくなかったのですが、この時は山梨の「人とボールが動く」バスケが機能し、ディフェンス力のある富士通が守りが絞り込めず、翻弄されてしまったのです。この要因としては、片山菜々選手の存在が大きい。片山選手は、とにかくつなぎ役に徹して動き回った。その動きは横に動くのではなく、インサイドまど深く動き、その後、アウトサイドまで戻って、ボールをもらう。それを常に繰り返し、富士通ディフェンスの的を絞れなくした。そして4Qでは、積極的に3ポイントも決めきり、笑顔がこぼれた。「積極性がないのが私の欠点なんです」といっていた片山選手は、見事、自分の壁を乗り越えた瞬間だった。
また、この日の渡邊愛加選手は、もう無双状態だった。3ポイント4本決め、結果的に20ポイントを獲得した。渡邊選手の3ポイントが入りだすと、ホント、怖い選手に成長した。3シーズン目の渡邊選手は、新潟から移籍してきた時は、3ポイントシュートが打てるタイミングでも打たず、どこか遠慮があった。2シーズン目に入り、3ポイントが打てるタイミングでは打つようになり、徐々に結果がでるようになってきた。3シーズン目には、元々あった実力ではあるが、力が発揮できるようになった。ホント、3ポイントが入る時は、手に力が入っていなく、やわらかく打てる。もう1つ言い忘れたが、渡邊選手のカットインでのゴールも忘れちゃいけない。本当に苦しくて疲れている時に、走り込むのは苦しいと思う。それでも走り込む姿は後輩達にも力を与えてくれた。
今期、僕の中では初めてじゃないかと思うのですが、若原選手がケガで欠場することが多かった。正直、山梨の点取り屋だったので、若原選手の欠場はイタイなーと思っていた。ただ若原選手欠場の中、富士通戦で勝利した時は、正直歯がゆい思いだったろう。桜花学園、東京医療保健大学、山梨では1年目からスターター。ある意味、バスケのエリート街道を歩いてきた。その若原選手が、画面越しに自分のチームの試合をみた時にどんなことを思ったのか。ただ、僕は思う。味わったことのなかったこの時期が、若原選手を人としても成長させ、さらにバスケに対する思いを深くさせてくれたはずだ。アーリーエントリーの選手が試合で負け、泣いていた時、慰めている若原選手を見た時、「ひとまわり大きくなったな」と実感した。
そんな若原選手をすごいなーと思ったプレイを1つ。12月25日に行われたトヨタ戦。山梨の「人とボールが動く」バスケに翻弄されたトヨタは、ゾーンディフェンスに変更する。そうなると、上手くボールが回らなくなりかけた時に、若原選手はゾーンディフェンスを崩す基本として、3ポイントを迷わず、打った。そしてきめきった。さすが、この辺はバスケエリート。実力が違うなと感動した。
やばいどんどん長くなってしまう。。。。
最後に、やっぱり岡萌乃キャプテンの今期の成長は大きい。山梨で7シーズン目といえば、もうレジェンドクラス。「私の体は葡萄でできている」と言ってもいいくらい(笑)。
今期はチームも大きく一新したことで、「自分がなんとかしなきゃ」という気持ちが強かったんだろう。誰よりも責任感の強い岡選手だけに、とにかく結果を出したかったに違いない。その気持ちは現実となった。苦しい時に、岡選手の3ポイントで何度も助けられた。プレイ結果で選手達を鼓舞し続けた。ボールが外を回っているだけと言われれば、インサイドで大きな選手とポストを繰り返した。ヒザにはいつも大きなテーピングをしながら試合に挑んでいた。僕が印象に残っているのは、富士通戦のラスト、ブレイクで町田選手に2ポイント与える所、一瞬の判断で、アンスポで、フリースローにした。あの判断がなければ、正直、負けていたかもしれない。岡キャプテンの勝利への執念を見た気がした。
開幕前、「今期の選手達は、伸びしろしかないんです」と言っていた岡キャプテン。岡選手自身もまだまだ伸びしろがある。今後が楽しみだ。
来季に向けて、課題はやはりディフェンス。失点平均83点では勝つものも勝てない。攻撃はディフェンスから始まる。サッカーでもこれが基本。ディフェンスの強いチームはやはり強い。強いというか勝つチーム。オフェンスは水ものだけど、ディフェンスは自分達でなんとかできる。だからどのチームもディフェンスを強化する。
平均リバウンド37も、40にはしたい。
それと、1番は、1日、2日間走り周れる体力。夏場にどれだけ走り込めるかが勝利をわける。試合中、苦しい時に「自分達は、Wリーグ1、走った」と思えれば勝てるだろう。
山梨の選手達の気持ちを少しは理解できるのは、毎試合後、夜中までかかってリポートをアップしてくれる広報の天野さんのおかげ。このリポートを読めば、選手達はこんなことを思っていたのかといろいろ納得ができる。写真撮りながら、メモもとり、終わったら監督、選手のコメント取り。もちろん合間にはメディアの取材対応。宿に帰って、データ整理、原稿書き。僕もライター時代、アイドルのライブ後、ホテルで夜中までかかって、リポート原稿を書いていた時は泣きそうになった。大阪まできて、月見そばしかたべてないーって(笑)。夜中、12時に編集者からは「原稿まだですかー」って。おっと、いいけない逸脱してしまった(笑)
ただ、1つ言えるのは、この試合リポートは、個性豊かなふぞろいのブドウのような選手達への天野さんなりの励ましのメッセージだと思っている。
だからどんなに夜中になっても更新することができるのだ。
皆、自分自身と戦っている。そして自分自身の壁を乗り越えようともがき、苦悩し、乗り越えていく。そんな人間模様を見させてもらった山梨クィーンビーズの今シーズンでした。
最後にこんな言葉を残して締めくくりたい。
「挑戦の終わりは新たな挑戦の始まり。」