江ノ電沿線徒歩移動RTAをした話

はじめに

8月某日に江ノ島沿線徒歩移動RTAをする機会があったので、そこでの話をまとめようと思います。需要があるような話なのかは知りませんので、とんでもなく暇な時に読んでください。

なお、これを題材にした怪文書を「算数数学コンテスト2024」というコンテストに投稿したところ、見事に表彰されてしまいました(え?)。怪文書は https://mathchannel.biz/mathcontest/ より閲覧することができますので、興味がある方はそちらもご覧ください。


そもそも江ノ電沿線徒歩移動RTAとは

怪文書にも書きましたが、改めて江ノ電沿線徒歩移動RTAのルールをざっくりまとめておきます。

  • 鎌倉ー藤沢間をすべて徒歩で移動する。

  • 江ノ電の15駅すべてに立ち寄り、写真を撮る。スタート時の撮影時刻とゴール時の撮影時刻の差がRTAの記録になる(途中で駅を飛ばしてゴールするとペナルティ)。

  • スマートフォンで地図を参照して進路を決めるのはNG(街中の地図の参照はOK)

要するに「勘を頼りに江ノ電全駅を徒歩でめぐればOK」というシンプルな遊びです。ルールを聞いただけでワクワクしてきますね(病気)。

なぜこんなことをしようと思ったのか

はい、恐らく読者のほとんどはこのように思っているのではないでしょうか。というわけで、本題に入る前に、まずは本RTAに至るまでの紆余曲折を書き連ねていきます。RTA当日の朝から遡ってみましょう。

その日は、朝から昼過ぎまで江ノ島周辺で用事がありました。この用事が現地解散であることは聞いていたので、もちろん用事自体も楽しみではあったのですが、午後の時間をどうするかというのも私にとっては楽しみの一つでした。
ところで、皆さんは江ノ島や鎌倉と聞くと何を思い浮かべますか?8割くらいの人は大仏や鶴岡八幡宮と答えると思いますが、実はこの辺りのスポットは意外にもアニメの聖地が多かったりします。特に今年の春休みに青ブタを一気見していたこともあり、「七里ヶ浜」はかなり行きたいスポットでした。というわけで、「午後の時間は聖地や有名どころを散策しよう」というのはすんなり決まりました。

さて、無事に用事も終わり、小田急やJRを乗り継いで鎌倉駅に着きました(これは鎌倉駅に着くまでに聞いた話ですが、江ノ島→藤沢→鎌倉→七里ヶ浜という経路はめちゃめちゃ遠回りです。一瞬「やっぱ帰ろうかな」と思いましたが、後輩から「本当にそれで後悔しないんですか?」という鋭い指摘を受けて結局散策することを決意しました。良い後輩をもったものですね)。普通なら、ここから江ノ電の改札を通り抜けて七里ヶ浜までレトロな電車で揺られていくというのが王道なのですが、連絡改札へ向かおうとしたところで足が止まりました。

脳内ぼく(あれ???それって、普通の散策じゃない???)

その声に納得してしまった自分は、一旦鎌倉駅の外に出ました。そうだ、鎌倉駅周辺なら鶴岡八幡宮や小町通があるので、そこをめぐるのもいいかもしれないと思いましたが、またしても足が動きませんでした。

脳内ぼく(それも普通の散策じゃない???)

さすがに「じゃあ何したらええねん」というツッコミが飛び出して脳内ケンカが始まってしまったので、とりあえず妥協案を探ったところ、以下の必要条件が浮かび始めました。

  1. 七里ヶ浜には行ったことがないので今日行きたい(鶴岡八幡宮などは行ったことがあるので、正直行かなくてもいい)

  2. ただでさえ江ノ島に行くまでにお金や充電を減らしてしまったので、これ以上それらのリソースを消費したくない。

このあたりの条件が出た段階でだんだんやるべきことが明確になってきました。

じ ゃ あ 歩 い て 七 里 ヶ 浜 を 目 指 せ ば い い じ ゃ ん 。

これには脳内ぼくも納得です。そして、おそらく江ノ電伝いに行けば携帯無しで七里ガ浜にたどりつけるのではないかと考えました。というわけで、兎にも角にもまずは鎌倉駅を出発です。
しばらく道路を進むと、線路が見えなくなり、と思えば踏切が見えてきて、そこを横断してまた道路を進むと線路が見えなくなり……という状態になりました。少し厄介だなぁと思っていましたが散歩していくうちに

「この状況で全駅を徒歩で制覇できたら面白いな!?!?」

と思い始めてきました。そう、これこそ、記念すべき江ノ電沿線徒歩移動RTA誕生の瞬間です。一言で言ってしまえば、鎌倉クリシェの選択肢を徹底的に排除した結果生まれたプチエクストリームスポーツということです。

時系列で記す実際の感想

RTAに至るまでの経緯が膨大でしたが、ここからはいよいよ実際にやってみた感想を記していきます。たまに写真も撮っているので(駅は全部取りましたが、省略)(充電は使いたくなかったんじゃなかったの???)、それも載せつつ書いていきます。

鎌倉→和田塚

13:47 鎌倉発!

鎌倉駅近くということもあり、住宅街や建物が多い中を江ノ電の線路が敷かれているため、一度線路を離れると、見つけるまでにかなり苦戦しました。かなり大回りした末に辿り着きました。

→由比ガ浜

踏切との交差を繰り返し、おおよその位置を推測しながら(←詳しい推測の仕方は怪文書を読んでください)歩くと着くことができました。
ところで、細い道を選びつつ歩いていると住宅街の中にひっそり踏切がありました。うーん、なかなかにエモい…

こういう景色いいですね

→長谷

由比ヶ浜駅を出発して一旦は海に出たのですが、先ほど駅で確認した地図では長谷寺が内陸部にありました。「戻ってこい、俺」ということで頑張って山側に向かって歩きました。

→極楽寺

とりあえず線路からあまり離れずに進んでいくと、エモめの寺がありました(踏切を渡ったが寺なの、エモくない?)。あまりにエモエモで尊みが深くて草だったので、お賽銭箱に1円を入れて適当に祈りました。
ところで江ノ電は長谷駅から山奥に向かって進んでしまうため、中間値の定理戦法が上手く効かない区間です。とりあえず、次の駅に向かって進んでいることを信じて進みますが、道路が意外と急勾配で大変でした。しばらく坂を上り続け、「早く次の駅見えてこないかな~」と思っていた矢先に自分の真下から電車が出てきてびっくりしました。トンネルがあると完全に線路を見失うので難しいですね。

→稲村ケ崎

極楽寺に地図があったのですが、稲村ヶ崎までは線路と道が並走していました。こうなると答えに従って歩いている感じがします。稲村ケ崎駅の看板を探すのには地味に苦戦しました(看板なんだから、もう少し見えやすいところに設置してほしい……)。

→七里ヶ浜

引き続き線路と並走して歩きます。スラムダンクEDの聖地に似た場所があり写真撮ったのですが、すぐ近くの高校の看板を見たら「七里ヶ浜高校」で、完全に騙されました(聖地は鎌倉高校前)。七里ヶ浜では牧之原翔子さんが見えました(幻覚)。が、日本列島に台風が近づいていたこの日。空は鈍い色で覆われ、海は適度に荒ぶっており、何とも言えない感情に包まれました。次はもうちょい天気のいい日に行きたいですね。

アニメの作画が良かったことを実感…

→鎌倉高校

引き続き線路と並走します。青ブタOP、スラムダンクEDの景色そのものなので、個人的には激アツスポットでした。脳内に「君のせい」が流れている状態で歩みを進めます。スラムダンクのEDでお馴染みの場所でも(今度こそ)写真を撮りましたが、歩道は外国人観光客の方でいっぱいでした。
なお、七里ヶ浜高校とは異なり、鎌倉高校は鎌倉高校前駅の近くにはありませんでした。

→腰塚

しばらくすると線路が直角に曲がって市街地に向かいだしたので、海辺の景色に別れを告げて次の駅を目指します。路地からちょこちょこ線路が見えるので、それを頼りに歩くと着きました。

→江ノ島

まさかの路面電車区間。こうなると経路探索に全く頭を使わずに済み単純に歩くだけになってくるので、ここに来て足の疲労が顕著に現れてきました。駅に着いた時は「え?もう江ノ島???」と思いました。駅が海から少し離れた場所にあり、正直まったく江ノ島感が無いことも相まって、いろいろと困惑しました。

→湘南海岸公園

市街地ということもあって線路と道路が再び離れてしまったのですが、有難いことに街中に地図があったので、それを記憶して道路を歩きました。結構見落としそうな場所に、こじんまりと駅がありました。

→鵠沼

本格的に住宅街に入り、かなり線路が見えなくなりました。あらかじめ決めていた探索方法に従って探索することで、高架上の線路を捉えながら進めたのですが、どんどん入り組んだ住宅地に入ってしまったせいで結局は線路を見失ってしまいました。ここの攻略が最も大変な箇所でした。
以下の地図では、この区間では川を渡る必要があることがあります。しかし、密集した住宅街の中で線路を追っていると、なかなかその事実に気付くことが出来ません。これに関しては今回の探索方法の弊害が顕になった部分です。

罠(画像下のあたりの住宅街で迷う)

→柳小路

直前まで線路を見失っていたので、沿線であることの安心感を痛いほど感じて、泣きそうになりました。足が痛いですが頑張って進み、難なく柳小路に到着できました。ただ、個人的にはかなり限界がきており、藤沢駅まであと二駅もあることに絶望してしまいました。

→石上

絶望したとは言ったものの、ここまできて断念するのは流石に意味不明なので、歯を食いしばって進みます。石上駅の外装はやけにおしゃれでした。なんで?

→藤沢

まともに歩道が舗装されていたので、執念で終点を目指します。このRTAを開始して初めて信号に出会い、赤信号で止まったのですがら足が尋常じゃないほど重く感じました。目の前にビルが増えてきたこともあり、ゴールがすぐそこなのは感じ取れたので、最後の気力を振り絞って歩きました。

ついに…!&その後

駅ビルの階段を上ると、その時がきました。

16:29 藤沢駅到着

記録は2時間42分でした。聖地でちょいちょい写真を撮ったり多少道に迷ったりしたりした上でのこの記録なので、初めてにしてはまあまあな方でしょう(個人の感想)。

さて、ゴール直後、終盤に長らく抱いていた絶望のみならず、当初の「なるべく金を使いたくない」という縛りも完全に雲散霧消しました。藤沢駅の写真を撮るや否や、座って何かを補給できる場所の探索を始め、真っ先に目に入ったバーガーキングに足を引きずりながら向かいました。

腹に入る物は何でもうまい。

さて、食欲は完全に満たされたのであとは帰るだけです。JRでまっすぐ帰ることも考えましたが、用事を終えて鎌倉へ向かった時もJRを使用したので、同じ路線を使うのはなんだか癪に触りました。そこで帰りは江ノ電を使って、車窓を眺めつつRTAの思い出を振り返ることにしました。
電車に乗ってすぐ思ったことですが、江ノ電はスイスイ進みますね。あれだけ足の疲労に喘いで絶望しながら何分もかけて進んでいた道を、江ノ電はものの1,2分で移動してしまいます。なんだか虚しい気分になってきますね。
あと、RTA中に江ノ島を見られなかったのが少し残念だったので、結局江ノ島駅でおりて散策することにしました。再び江ノ島を拝むことができてよかったです、用事を終えた5時間前にも拝んでいたはずなんですけどね???

江ノ島(5時間ぶり)

その後、江ノ電に乗り直すのも億劫になったので、湘南モノレールを使って爆睡しながら帰りました。運賃はまあまあ高かったです。めでたしめでたし。

今回のRTAのためのTips

最後にこのRTAをする方々のために、本RTAの数少ない経験者としていくつかTipsを残しておきます。今後同じRTAをする際の参考にでもしてください。

水分の携帯について

これは当たり前ですが、水分管理には気を付けましょう。この日は台風直撃ということもあり夏の酷暑はしのげたのですが、とはいえ持っていった水筒の水(350mL)は簡単になくなりました。特に、江ノ島を超えたあたりから自販機やコンビニがことごとく見当たらなくなるので、自分は水分我慢大会を強いられました。もしRTAをする方は多めに水分をもっていくといいと思います。

所有物や服装・髪型について

これも当たり前ですが、散策に必要のない荷物は無い方がいいです。また、服装はスポーツウェアが良いに決まっていますし、靴もウォーキング・ランニング用の靴が良いのは自明です。また、髪型は歩いているうちに汗ですべて崩れるので、はじめから全く何もしなくていいです。
自分はパソコンやら参考書やらをリュックに詰め込んでちょいとキレイめな私服とスニーカーという恰好でRTAに挑みましたが、そのせいで終盤の疲労感が3割増になってしまったと言っても過言ではありません。何かの諸事情のついでにRTAをするのは、割とお勧めしません。

景色について

中盤は海なので楽しいです。晴れていたらもっと感動も大きかったと思います。鎌倉駅周辺は建物が多いですがエモい地点があるので楽しいです。藤沢駅周辺は住宅街で何の感慨もわきません。心を無にして歩きましょう。

鎌倉周辺を舞台にしたアニメを見るとRTAの楽しみが増える

ここまで、反省ばかりを述べてきましたが、今回のRTAではよかった点もありました。それはズバリ「『青ブタ』を見ていた」という点です。先ほどから言っている通り、RTA当日は台風が迫っていたため、海辺の景色が決して良いものではなくて残念でした。しかし、内心、景色面での損失を聖地に来れた喜びが上回ったため、中盤も割と楽しく歩き続けることができました。とりあえず『青ブタ』は良いのでネトフリで見ましょう。自分は続きが気になっているのでラノベも購入しようと思います。ちなみに古賀朋絵推ss…。

おわりに

さて、自分にはかねてから目標があります。それは徒歩で山手線を一周することです。実は、後付けではあるのですが、今回のRTAは「山手線徒歩一周RTAの前哨戦」という位置づけでもありました。さて、聞いた話によると山手線は一周約40kmらしいのですが、今回踏破した江ノ電は全長何キロなのでしょうか?

???

……え?

割と歩いたのに、10km……?

俺は10km歩いただけで疲労困憊になっていたの???

江ノ電の全長って山手線一周の1/4なの?????

山手線一周達成まで、先は長いですね。とりあえず足腰を鍛えて散歩用の装備に課金します。

というわけで、noteでも再び怪文書を錬成してしまったわけですが、それにもかかわらずここまでご覧くださりありがとうございました。ではでは。

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