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ブサイクだけどガンに罹りにくい最強のネズミがいるらしい

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先日、ブックオフの200円コーナーで面白そうな本がないか物色していたら、私好みのやつがありました。吉田重人・岡ノ谷和夫『ハダカデバネズミ 女王・兵隊・ふとん係』(岩波科学ライブラリー・2008年)です。

私は動物園が好きで、東京に住んでいた頃は半年に一度くらいの割合でよく上野動物園に行っていました。その敷地の一角にハダカデバネズミコーナーがあります。薄暗い建物の中だったと記憶してますが、おそらく今も残っているはずです。

https://twitter.com/uenozoogardens/status/1213294234528149504

ハダカデバネズミは、人間の美醜感覚でいうと、とんでもない外観をしています。まず名前がやばい。ハダカでデバですからね

ハダカデバネズミはアフリカ東部、「アフリカの角」と呼ばれるエチオピアやケニアに生息しているネズミの一種です。

アフリカの角

地下で生活しているので目と体毛が退化している、哺乳類なのに体温調節ができない、ネズミなのに女王アリのように女王がいて集団で暮らしている、といった奇妙な特徴があります。立派なデバは地下を掘り進めるために使われるようです。

著者はアメリカの研究仲間からハダカデバネズミを6匹譲ってもらい、日本へ帰国する際、米国の農務省にかけあったりして、下準備を重ねていました。

ところが、航空会社の窓口では、「うちの持ち込み可能動物リストには、ハダカデバネズミはありません」と言われて機内持ち込みを拒否された。そんな動物がリストにあるはずがないからこそ、さまざまな許可をとってきたのに、まさか受付で拒否されるとは。受付のお姉さんはどうもネズミ一般がきらいなようで、ましてや「ハダカデバネズミ」なんていう妙な名前のネズミには何の同情もない。(p.9)

著者は意を決して、デバを抱えたまま搭乗ゲートに向かいました。手荷物検査場にはノリのよい黒人のおじさんが踊りながら仕事をしていました。

デバたちの骨格はエックス線にくっきりと映っていたが、私がにこりと笑って親指を突き立てると彼も同じポーズをして見逃してくれた。彼のおかげで今がある。(pp.9-10)

ハダカデバネズミが進化の過程で体毛を失った理由にはさまざまなものがあるようですが、寄生虫にたかられるのを防ぐためというのが有力とのこと。また、ハダカデバネズミが暮らすトンネルの中は一定の温度と湿度が保たれており、寒い日があったとしても、互いに身体を寄せ合って暖をとれば事足りるようです。

じつは、彼らは哺乳類であるにもかかわらず、自分で体温調節ができない変温動物なのだ。したがって、体温は爬虫類同様、周囲の気温にしたがって上下する。安定した彼らの生活環境には体温調節能力すらも不必要なのである。体温調節能力を手放すことには、メリットもある。それによってデバは、エネルギー消費量を低く抑えることに成功している。(p.24)

ハダカデバネズミが長寿なのも、そのあたりに関連がありそうです。飼育下では15年から30年くらい生きるようで、同じサイズの一般的なネズミと比べると、数倍~十数倍の長寿命です。

ハダカデバネズミはミツバチやアリのように、社会生活を営みます。女王デバを頂点とし、オスの王デバ、兵隊デバ、働きデバの階級ピラミッドから成り立っています。

https://www.imic.or.jp/column/articles/605/

女王デバは生まれながらの女王ではなく、トップの座を戦いによって自ら勝ち取らなければいけません。そして、常にその座は挑戦者によって狙われています。縄張り内の反乱を防ぐために、巣のあちこちを常に威嚇して回ります。

階級の異なる個体間でストレスホルモン値を比較した研究では、女王の受けているストレスが最も高く、次いでライバルとなる第二位メスの値が高いという結果が得られた。
また、僕たちの研究室で行った行動観察では、群れの中で女王の睡眠時間が一番少ないことが分かった。
そんな気苦労の絶えない生活を送っている女王だが、その末路もさびしい。病死するか、下克上によってその座を追われて命を落とすしかないのである。女王も楽じゃない。(pp.33.34)

兵隊デバは普段はゴロゴロしていますが、巣に異変が生じたときは、自らを犠牲にしてコロニーを守ります。

兵隊は、積極的に戦うというより、自ら犠牲になってコロニーを救う。天敵のヘビがトンネルの中に入ってきたとき、まっさきにヘビに向かって食べられてしまうのがおもな仕事である。遺伝子共有率がとても高いので、このような自己犠牲的な行動があらわれてくるのだ。(p.37)

そのほかの雑用は働きデバが担当します。生まれつき兵隊デバと働きデバに分かれているのではなく、身体の大きさや仲間との関係など、あくまでも相対的なものによって区分されていくようです。

本書では他にもさまざまな実験や性質、また飼育の苦労話が述べられています。よかったら手に取って読んでみて下さい。大変平易な筆致なので、1時間もかからずに読み進められると思います。

近年ではハダカデバネズミが「ガンにかかりにくい」動物として調べる研究が注目されています。

「ハダカデバネズミ」が、ガンにならない理由
ハダカデバネズミは、ガンマ線を打ち込んだり、腫瘍を移植したり、発ガン物質を注射したりしてもガンにならない。その一因は「密度の高いヒアルロン酸」だとする研究が発表された。
https://wired.jp/2013/06/26/cancer-immunity-of-strange-underground-rat-revealed/
がん耐性齧歯類ハダカデバネズミの化学発がん物質への強い発がん耐性を証明―炎症抑制を介したがん耐性機構の一端を解明―
がん化しにくい齧歯類ハダカデバネズミは、発がん性物質による強い発がん誘導を行っても全くがん化しないことを明らかにしました。ハダカデバネズミでは、発がん過程の促進に重要な役割を果たす炎症応答がマウスと比べ著しく減弱していることがわかりました。炎症誘導性の細胞死“ネクロプトーシス”に重要な遺伝子が機能を失っていることが、炎症応答減弱・がん耐性の一因だと考えられます。
https://www.amed.go.jp/news/release_0220331-01.html

老化耐性とガン耐性を持つ奇妙なネズミ、よかったらお近くの動物園で一度ご覧になってみてください。

日本動物園水族館協会のサイトでは、動物名を入力すると、その動物を飼育している動物園や施設が検索できます。

画像をクリックするとサイトに飛びます

先ほど私が調べてみたところ、日本では現在、円山動物園埼玉こども動物自然公園上野動物園シャボテン動物公園の4施設で飼育されています。残念ながら今は西日本でハダカデバネズミを実際に見ることはできないようですね。

ハダカデバネズミの化石が数千万年前の地層から発掘されているそうです。それほど長い間にわたって姿・形・社会性を変えていないのは、そのあり方が気候変動や自然災害など、ありとあらゆる環境変化に適応できたからです。そんな最強ネズミの究極の姿がハダカでデバだったというのは、なかなか興味深いですね。


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