ブサイクだけどガンに罹りにくい最強のネズミがいるらしい
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先日、ブックオフの200円コーナーで面白そうな本がないか物色していたら、私好みのやつがありました。吉田重人・岡ノ谷和夫『ハダカデバネズミ 女王・兵隊・ふとん係』(岩波科学ライブラリー・2008年)です。
私は動物園が好きで、東京に住んでいた頃は半年に一度くらいの割合でよく上野動物園に行っていました。その敷地の一角にハダカデバネズミコーナーがあります。薄暗い建物の中だったと記憶してますが、おそらく今も残っているはずです。
ハダカデバネズミは、人間の美醜感覚でいうと、とんでもない外観をしています。まず名前がやばい。ハダカでデバですからね。
ハダカデバネズミはアフリカ東部、「アフリカの角」と呼ばれるエチオピアやケニアに生息しているネズミの一種です。
地下で生活しているので目と体毛が退化している、哺乳類なのに体温調節ができない、ネズミなのに女王アリのように女王がいて集団で暮らしている、といった奇妙な特徴があります。立派なデバは地下を掘り進めるために使われるようです。
著者はアメリカの研究仲間からハダカデバネズミを6匹譲ってもらい、日本へ帰国する際、米国の農務省にかけあったりして、下準備を重ねていました。
著者は意を決して、デバを抱えたまま搭乗ゲートに向かいました。手荷物検査場にはノリのよい黒人のおじさんが踊りながら仕事をしていました。
ハダカデバネズミが進化の過程で体毛を失った理由にはさまざまなものがあるようですが、寄生虫にたかられるのを防ぐためというのが有力とのこと。また、ハダカデバネズミが暮らすトンネルの中は一定の温度と湿度が保たれており、寒い日があったとしても、互いに身体を寄せ合って暖をとれば事足りるようです。
ハダカデバネズミが長寿なのも、そのあたりに関連がありそうです。飼育下では15年から30年くらい生きるようで、同じサイズの一般的なネズミと比べると、数倍~十数倍の長寿命です。
ハダカデバネズミはミツバチやアリのように、社会生活を営みます。女王デバを頂点とし、オスの王デバ、兵隊デバ、働きデバの階級ピラミッドから成り立っています。
女王デバは生まれながらの女王ではなく、トップの座を戦いによって自ら勝ち取らなければいけません。そして、常にその座は挑戦者によって狙われています。縄張り内の反乱を防ぐために、巣のあちこちを常に威嚇して回ります。
兵隊デバは普段はゴロゴロしていますが、巣に異変が生じたときは、自らを犠牲にしてコロニーを守ります。
そのほかの雑用は働きデバが担当します。生まれつき兵隊デバと働きデバに分かれているのではなく、身体の大きさや仲間との関係など、あくまでも相対的なものによって区分されていくようです。
本書では他にもさまざまな実験や性質、また飼育の苦労話が述べられています。よかったら手に取って読んでみて下さい。大変平易な筆致なので、1時間もかからずに読み進められると思います。
近年ではハダカデバネズミが「ガンにかかりにくい」動物として調べる研究が注目されています。
老化耐性とガン耐性を持つ奇妙なネズミ、よかったらお近くの動物園で一度ご覧になってみてください。
日本動物園水族館協会のサイトでは、動物名を入力すると、その動物を飼育している動物園や施設が検索できます。
先ほど私が調べてみたところ、日本では現在、円山動物園、埼玉こども動物自然公園、上野動物園、シャボテン動物公園の4施設で飼育されています。残念ながら今は西日本でハダカデバネズミを実際に見ることはできないようですね。
ハダカデバネズミの化石が数千万年前の地層から発掘されているそうです。それほど長い間にわたって姿・形・社会性を変えていないのは、そのあり方が気候変動や自然災害など、ありとあらゆる環境変化に適応できたからです。そんな最強ネズミの究極の姿がハダカでデバだったというのは、なかなか興味深いですね。
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