素材を活かす

二週間前の俺は髪がボサボサだった。

最後に美容院に行ったのは何ヶ月前だろう。伸びてきてもセルフカットでしのいでいたからしばらく足を運んでいなかった。でもこれ以上やり過ごすのはさすがに限界かなってところまできていた。

例えるならウォーズマン。ウォーズマン風マッシュヘアだ。「ハロウィンが楽しみすぎて前乗りで仮装してる奴」と思われかねない髪型だったからしぶしぶ美容院に行くことにした。

どうして美容院に行くのが嫌か。それは切ってもらった髪型に納得できたことが一度もないからだ。

写真をみせながらリクエストを伝えても仕上がりがなんか違う。もちろんそっくりそのまま同じになるなんて思ってない。だけど仕上がりをみるといつもガッカリする。なんか違う。無理やり感がある。

これが数十回続いているわけだから美容院不信になるっしょ。とは言え行かない方がアレなのでウェブでみつけた美容院に予約を入れた。正直なところ二週間前の俺も諦め半分だった。切り終わった後にまた凹むんだろうなと。しかしその予想はハズレた。

予約した美容院は男性オーナーが1人で切り盛りしていた。狭くてシンプルだけどところどころにこだわりが感じられて居心地がいい。

話しやすい人だったから「切ってもらった仕上がりに納得したことがない」ということを正直に伝えた。するとカウンセリングを入念にしてくれて今までにない提案をされた。

「今のニュアンスが似合うから整えるくらいにしましょう」

そうか俺はウォーズマン風マッシュが似合う男だったのか!納得していいのか否定した方がいいのかわからなかったからとりあえず従ってみた。ら初めて「これだ!」と唸る髪型の自分が鏡に映っていた。切ったばかりなのにすでに馴染んでいたからだ。いつもなら切って1ヶ月くらいしてようやく馴染むのに。

オーナーに初めていいと思えたことを伝えると「素材を活かしただけです」とポツリ。ベジータの次にカッコイイ人だと思った。

料理でもそうだけど素材の味を活かしたものって確かにおいしい。

もろきゅうなんて生のきゅうりと味噌だけなのにうますぎていくらでも食ってしまう。生牡蠣にレモン絞ったやつもうっとりするほどうまい。

つまり変に力まないでそのもの(自分自身)の良さを出すことが一番魅力的になるってことだよね。これからは「ウォーズマン風ヘアが似合う者として」堂々と生きていこうと思う。

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おいたん
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