冬限定の幸せ
10時過ぎに起きてカーテンを開けると外は銀世界。気持ちがいいくらい大雪だ。邪魔者の太陽は雲に隠れており外は薄暗く、淡々と雪が降り続く俺の好きな冬の景色が広がっていた。
薄暗くなるほど雪が降る日は静かだ。
30秒ほど雪の舞う景色に見入っていた。寒さを感じ、エアコンの設定温度を少しあげて電源を入れた。洗面所で顔を洗っている途中、急に味噌汁が食べたくなり作る準備をした。
鍋に冷たい水と昆布を入れて火にかける。沸騰したら弱火にする。昆布に爪をたてて痕がつくようなら取り出して火を止める。差し水してお湯の温度を下げてから鰹節をケチらずに入れて10分くらい待つ。鰹節を取り出せば出汁の完成だ。
出汁をとっている間にキャベツ、人参、玉ねぎを切っておいた。出汁が取れたらあとは入れるだけ。
台所から部屋に戻ると暖かくなっていた。それでテンションがあがり冷蔵庫からアサヒスーパードライを引っ張り出して封を切り、雪景色を観ながらゴクゴク飲んだ。
部屋は過ごしやすい暖かさ。なのに壁を隔てた外は極寒。このシチュエーションに幸せというか安心感を覚えるのだ。
思い出すのは冬の時期の小学1年の教室。
教室の窓側には温水式の暖房があった。古くなっているからか稼働時は特徴的な振動音がする。
その日も雪がどっさり降っていた。昼休みはいつもなら外で遊ぶのだがその日は教室で迷路を書いていた。友人との間で流行っていた遊びで、なるべく難易度の高いものを作ってビビらせたかったからだ。
大雪のせいかほぼ全ての人が外遊びに繰り出していたから教室は静かだった。
暖房機の振動音。廊下から聞こえる話し声。鉛筆を滑らせる音。風が窓を叩く音。チョークと木の香り。
顔をあげて窓の方を見ると雪が深々と降っている。その時、俺は確かに安心感と幸福感に満たされていた。
大雪の日にズル休みをするのも好きだった。
親が許してくれない、というか怒られるけど時々折れて休ませてくれた。
外は大雪。俺は石油ストーブの前に鎮座してガン子ちゃんとかポンキッキーとかをみている。あぁ、幸せ。あぁ、安心。
これってなんでなんだろう?なんで安心とか幸せを感じるのだろう?
落差なのかな?夏にキンキンのビールを飲むとか。
でも夏にクーラーが効いた部屋にいても、安心感とか幸せって感じないんだよな。
理由が謎だ。
今わかることがあるとすれば「味噌汁にオリーブオイルをちょい足しすると激ウマ」ということ。
暖かくなった部屋で雪景色をみながら味噌汁をすする。やっぱり幸せだし、安心する。
この正体はなんなんだろう?