クリエイティブに込められる熱量が全く変わる!Oisixが“デザインファーム”を社内にもつ意味とは?
ユーザーに、より良いプロダクトやサービスを届けたい。
そう考えた時に、デザインが重要であることに異論がある人はいないでしょう。
デザインの重要性の高まりから、企業にデザイナーとして採用され、いわゆる『インハウスデザイナー』として活躍する人が増えてきました。
ですが、多くの会社はインハウスデザイナーを採用しておらず、雇い入れたとしても少人数のところがほとんどというのが実情ではないでしょうか?
一方で、インハウスデザイナーの採用・教育に力を入れている企業もあります。その一つが、Oisix ra daichi(オイシックス・ラ・大地)です。
現在、社内に30名を超えるインハウスデザイナーが在籍し、自社商品のパッケージデザイン、お客様の体験を高めるグッズのデザイン、WebサイトやアプリのUI/UXなど、様々な局面において活躍しています。
「デザインを社外にアウトソーシングするのと、デザイナーも社員として一緒に企画を成功させようとするのでは、アウトプットされるものの熱量が違ってきます。
社内にいることで、直にお客様の声も聞くし、売上などの数字的な結果も全て共有されるので、自分が生み出すクリエイティブへの責任感も全く変わってきますね」
Oisix ra daichi・サービス進化室でアートディレクターを務める福嶋智美さん(写真上)は、こう言います。
デザイナーが、企画や結果へのコミットまで含めて、チームメンバーとして参加してくれたら、心強いことは間違いないですよね。
Oisix ra daichiでは、「デザインの力でブランドを育てていく」ということで、インハウスデザイナーのクリエイティブチームが発足し、それを『デザインファーム』と呼んでいるそうです。
今回は、Oisix ra daichiでインハウスデザイナーとして活躍する福嶋智美さんと、岩田千里さん、広沢晴菜さんの3名に話を伺い、デザインファームを社内に持つ意味について考えてみました。
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インハウスデザイナーって、どんな仕事をやってるの?
ー まずは、3人の仕事について紹介をお願いします!
岩田千里さん(写真上):私は中途で今年の4月入社なので、Oisix ra daichiで働いているのはまだ半年間くらいなんです。ただ、この半年間で、季節のイベントに合わせたWebサイトのデザインとディレクションから、お客様の体験をつくるグッズデザインなど、いろんな事をやらせてもらってます。
ー お客様の体験をつくるグッズデザインとは、どんなものなのでしょうか?
岩田さん:そうですね。たとえば、『とんとん相撲』とか。
岩田さん:『おいしっくす秋場所』という企画があって、その際に、お母さんと子供が楽しめるグッズをプレゼントしようということになって作ったものです。「とんとん相撲なんて作ったことないし、どうしよう…」と思いながら作りました(笑)
ー 広沢さんは、いかがでしょうか?
広沢晴菜さん(写真上):私は今年の新卒入社です。大学でUX(User Experience・ユーザー体験)を勉強していたので、「お客様の声を大切にし、そこに潜む欲求から体験をデザインする」というOisix ra daichiのUXに対するアプローチに惹かれて入社しました。
現在は、スマホサイトやスマホアプリを、より使いやすく感じていただけるように、UI(User Interface・ユーザーインターフェイス)のデザインを担当しています。例えば、開発中の画面ですが、このようなUIのデザイン(写真下)に関わっています。
広沢さん:また、「おいしそう!」とつい欲しくなってしまう気持ちを生み出すグラフィックデザインの勉強もしたいと思って、岩田さんが所属している、今週のイチオシ商品や特集を作成するチームの仕事もやらせてもらっています。特定のジャンルに特化するというよりは、お客様がより良い食生活を叶えられるようになることなら何でもやりたいと思っています。
ー 岩田さんも、広沢さんも幅広く活動されてますね。福嶋さんは、いかがでしょうか?
福嶋さん:私はOisixオリジナル商品のパッケージデザインを担当しています。例えば、こういったものです。
福嶋さん:私の社歴は結構長くて、これまでに色んなことを経験しました。私が最初にOisixに入社した2009年は、社員数もまだ少なく、狭い空間で部活みたいな感じでやっていました。なので、担当が細分化されていなくて、デザインがメインではあるけど、デザイン以外も何でもやっていましたね(笑)。会社が成長するにつれて、役割分担ができ、担当領域がハッキリしてきた感じです。
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育てている感覚が、外と中では全く違う。
ー 岩田さんと福嶋さんは、Oisixに入社する前に制作会社でデザイナーをご経験されてます。外部の会社から関わるのと、インハウスデザイナーとして内部から関わるのでは、デザインの質って違いがでますか?
福嶋さん:私は全然違うと思っていまして、何より熱量が違ってくるかなと。
ー 熱量が違うというのは、どういうことなのでしょうか!?
福嶋さん:やっぱり、今の方がお客様が何を欲しているのかを直に聞いたり、自分たちのアウトプットがお客様にどのような影響を与えたのかを把握することができるので、生み出すクリエイティブに対して強く責任を感じるし、熱量が高くなるんですよね。
制作会社にいた時はクライアントである企業や、そこのパートナーである代理店さんからデザインのオリエンを受けるんですが、なんとなく担当者の方の好みやフィーリングの部分で指示をいただくことが多くて、「これ、本当に受け手となるユーザーさんが望んでいることなのかなぁ…」と思うことが多かったんです。
そして、自分が作ったアウトプットがユーザーの方々にどう受け止められたのかという結果のフィードバックがあまりなかったので、「作って終わり」みたいなことが多かったんですね。
でも、Oisixでは、デザイナーがお客様からの話を直接聞くこともありますし、お客様アンケートやお電話でいただく問い合わせの内容も見ます。また、自分たちが関わった結果を、売上などの数値も含めて知ることができます。
このPDCAをまわし続けて、お客さまの満足を積み重ねることで生まれる熱量というのはすごくて、これは制作会社にいた時は気づきませんでしたね。
岩田さん:私も外部の制作会社で働いていた時より、インハウスデザイナーのほうが面白いと感じています。やっぱり、お客様からのフィードバックや、売上などのダイレクトな数字がわかるのは大きいですね。育てていっている感覚が強く持てますし。
ー 岩田さんは、以前の会社でもインハウスデザイナーとしてお仕事をされていた経験がありますが、そちらと比べてOisix ra daichiの特徴ってありますか?
岩田さん:人数の違いですかね。インハウスデザイナーって、大抵そんなに人数は多くないんですよ。でもOisix ra daichiは30名以上もいる。
知識を持っている人が沢山いらっしゃるので、わからないことがあれば聞けるし、デザイナー同士でデザインに関するフィードバックをもらえるというのが、めちゃくちゃありがたいと感じてます。
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息を吸うように使っていただける存在へ。
ー 確かに、インハウスデザイナーとして組織のなかにいることで、お客様の声や数値結果はもちろん、プロジェクトメンバーと温度感を共有したりすることで、デザインに込める熱量が変わりそうですよね。
実際、みなさんがインハウスデザイナーとしてOisixを見た時に、これから育てていきたい部分。伸び代を強く感じる部分って、どんなところでしょうか?
広沢さん:私は、Webサイトやアプリが結構ガチャガチャしちゃっている印象があるので、そこをもっと整理していきたいですね。
Oisixって、スゴく良いコンテンツとか、商品とか沢山あるんですけど、「使いにくさ」によってそれが埋もれてしまっている印象が強くて。お客様がお買い物をする瞬間に、そういうストレスを感じずに自然と商品に触れ合えるようにしていきたいんです。
現在、この課題感をデザイナー同士で共有して、「じゃあ、どうなったら良いのか」ということを検証するための取り組みも始まりました。
例えば、お客様が実際に操作しているところやインタビューの様子を、別部屋に控えているデザイナー全員がリアルタイムで観察して、「あぁだね。こうだね」と言いながら、付箋に書いて課題を抽出していくというワークも始めました。来年・再来年に向けてガラッと変わっていくんじゃないかと思っています。
ー ちなみに、目指しているOisixのUXのイメージって、どんな感じでしょうか?
広沢さん:これはチームとしてではなく、私個人が考えていることですが、ZOZOTOWNやAmazonって、「そうか、私ってこれが欲しかったんだ」と言う気づきを与えてくれる感じが、スゴく良いなぁと思っているんです。
なので、「これを食べてみたい」と思えるものとの出会いをつくれて、「何が欲しいか決まってないけれど、ここに来れば大抵なんとかなる」みたいな存在にOisixもなりたいですね。
あとは、例が変わりますけど、TwitterやInstagramって、特に意識をしなくても、息をするように見ちゃうじゃないですか。そういう風に生活の一部に溶け込めるような存在にもなりたいですね。「Oisixを見るぞ」じゃなくて、気づいたらOisixを起動していて、気づいたら閉じているみたいなサービスになれたらと思っています。
岩田さん:本当にそうなってほしいですね。広沢さん達の取り組みによって、顧客体験が随分と変わってくるんだろうなぁと期待しています。
ただ、組織が大きなくなればなるほど、各々の担当チームでやりたいことがでてきて、その結果、ゴチャッとしてしまうというところもあるのかもしれません。そこの交通整理みたいなのも大事になってくるのかもしれないですね。
ー なるほど。確かに今日の売上を追う施策と、中長期的にブランドイメージを高める施策がぶつかって、どっちつかずになってしまうことって、結構ありますからね。そこの加減をコントロールする役割も大事になってきますよね。
岩田さん:私の部署は、目の前の売り上げを追っていくチームなので、うまく連携がとれていないときはチーム内でも混雑があったりしますからね(笑)徐々に交通整理がされてはきているんですが、まだまだ伸び代はあると思います。
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囚われずに動くことで、デザインの質が上がる。
ー 福嶋さんは、どこらへんに伸び代を感じますか?
福嶋さん:そうですね。直すべき部分を直したり、サービスを進化させるというのは大切だと思います。それに加えて、さらに伸びるためには表現の部分をもっと磨く必要があると感じています。
現在、美味しいものや品質の良いものが溢れている時代です。そんな時代において、別のものが食べ物に求められるようになってくると思うんですね。
例えば、その一つが、ヘルスケア。会社として力を入れていこうとしている領域です。
(Oisix ra daichiの「食×ヘルスケア」における取り組みの詳細はコチラの記事をご覧ください→『ダイエットが続かない…。体調が不安定…。そんな悩みを”食”でサポートするOisix ra daichiの特命チームが始動!』)
でも、これまで、美味しいものと健康になるためのものは別だと考えられがちだったと思います。味は微妙だけど、健康になるためには我慢して食べなきゃという具合に。
身体のためにって義務的に食べるのではなくて、美味しそうだから食べるっていう風にお客様に思っていただくためには、どういう表現になるんだろうなぁというのをずっと考えています。
ー Oisixは、楽しさやワクワク感を届けることを大切にしてきているから、ヘルスケアの領域でも、楽しく健康になるみたいなことをやっていきたいですよね。
福嶋さん:そうですね。美味しそうだし、楽しそうだから、使ってみたら、結果健康になってるみたいな。漠然としてますが、そんな見せ方がデザインできたらと思っています。
ー 最後に、Oisix ra daichiのデザイン力を高めるために、デザインファームのメンバーに必要だと思うアクションはありますか?
福嶋さん:そうですね。一つあげるとしたら、もっと自由に動いた方がいいということでしょうか。
上長がこう言っているからとか、会社の方針がこうだからに囚われ過ぎずにに、お客様の声や自分が感じていることをベースに、自分がこうあるべきと思ったデザインをしてみるのが大切だと思います。その結果、会社全体の表現力も上がってくると思いますし。会社もそれを望んでいるじゃないかなと思いますね。
ー 上にお伺いを立てるのではなくて、自分が良いと思ったものを推進していく突破力とか、熱量の部分ですね。
福嶋さん:もちろん、なぜこのデザインなのかをロジカルに話さなきゃいけない部分もあると思いますけど、「私は、これが一番いいと思う」という熱量に勝るものはないんじゃないかなと思うんですよね。
岩田さん:その通りですね。でも、今の話を聞いていて、私はすでにやりたい放題やらせてもらえてるなぁと思いました(笑)
福嶋さん:こういう人が、沢山いると良い(笑)
岩田さん:本当に楽しくやらせてもらってますね。
あとは、何もわからない状態で、「自由にやってOK」といきなり放り出されても迷子なっちゃうので、どこまでがOKで、どこからがNGかのガイドラインを整えながら、その中で、のびのびデザインするというのが理想的なんじゃないかなと思いますね。
ー 確かに、そういったガイドラインがあると安心して自由にデザインに取り組めそうですね。今日は、インハウスデザイナーの意味や役割について、色々とお話ありがとうございました!
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Oisix ra daichiでは、一緒に新しい食体験を創っていく仲間を募集しています!
以上、Oisix ra daichiでインハウスデザイナーとして活躍する3人のインタビューをお届けしました。
サービスやプロダクトを考える際に、何を作るかはもちろん大事ですが、良い品質のモノが溢れている現在、どう届けるかの重要度がより高まってくると感じています。
その時に大事になってくるのは、やはりデザイン。直感的に「このサービス(商品)を使ってみたい。楽しそう。イケてる」と思ってもらえるような表現が大切です。
デザインをアウトソーシングせずに、インハウスデザイナーとしてチームとなり、一緒にお客様の声を聞いたり、結果を共有できる組織体制をつくる。これからの時代において、多くの企業が検討すべきことかもしれません。
最後に、現在、Oisix ra daichiでは、現在メンバーを大募集中です!新しい食体験を創ることに興味がある方は是非こちらからご応募ください
Text & Photo:井手桂司