夢4 泣く男
知らない男が、パソコンの前でトマト缶を飲んでいる
体が大きく、髪も無造作に伸びている、眼鏡をかけた若い男
ひとつ目のトマト缶には尿が
ふたつ目のトマト缶にはえのきが入っていた
男はえのきが入っていることに気づくと嫌そうな顔をして、捨てた
男はもう一つ飲まなければ、と
梯子を登って、部屋の中を歩いていく
私はその後を、トマト缶の空き缶を持ってついていく
汚い台所。といっても、壁と床の細かい装飾の
凹凸のある部分に、煤がこびりついているような
台所自体に物は少なく、床にはなにも置かれず、ただキッチンのみある
男が歩いていく先は真っ暗。ドアがあるのかさえもわからない
2部屋め、覚えていない
3部屋め、リビングのような部屋。金魚の入った水槽や、ソファーのようなものがある 少し生活感が出てきたな、と思う
どの部屋も薄暗く、前方は真っ暗で怖い
男は私が持っている缶に気づくと、「あ」と言って受け取る
男は私を部屋に案内したのだろうか?
気づくと、漫画棚のある部屋にいる
ここは綺麗で明るい
漫画棚には、月刊誌が置いてある
猫もいる クリーム色の長毛種で、活発に動き、かわいらしく鳴く
男が飼っているのだろうか
男は部屋の入り口の向こう側で、男の母と会話しているらしい
こっそり近づいて盗み聞き
母親と思わしき声は、男に叱責している
漫画を描くのをやめなさいと言っているような気がする
男は言葉にならない声で絶叫している
私は危険を感じてドキドキする
入り口のカーテンが開くと、男が立っていた
男の目は見開かれ、涙が一筋垂れていて
視線はきょろきょろとしていた
「ちょっと、やることがあるので、あっちに」
と言って、男は右の方に走っていった
危険がないと知り、私は、彼のことをもっと知りたくなった
彼の描いた漫画を読まなければ
それも、彼が戻ってくる前に読まなければ
猫が案内してくれる部屋に行って
漫画棚の前に滑り込み、これだとわかった
それは少年向けの月刊誌だろうか?
作者名に「美咲橋本」と書かれたものと「みはな はしもと」と書かれたものが
並んでいて、それが彼のペンネームだと不思議とわかる
読んでみるとそれは、なにもわからない
なにもかもわからない
文字や絵が書いてあるが、なにもわからないものだった
黒くて、目が鋭いなにかが大きなコマに描かれていたり
戦艦のようなものが、海に浮かんでいるようなコマがあったり
それ以上はなにもわからなかった
私は部屋の外に出て彼を探す
彼は廊下で、ピンクの小さなタオルを絞っていた
何個も何個も積み上げられたものをみると
彼はそれをしばらく一生懸命やっていたのだと推測された
私が
「それをずっとやってたの」
と聞くと
「やらなくちゃいけない」
と泣き顔になる
私が
「抱きしめてもいい?」
と聞くと、何も言わずにこちらに体を向けるので
私よりもずっと大きなその体に抱きつく
男に
「抱きしめてくれると嬉しいよ」
と言うと、そっと手を回してくれる