健康オタク ろうそくをこしらえる
こんにちは、健康オタクです。
どの程度オタクかというと、遥か昔から竹炭だのオメガ3だか6だかのオイルを検討していたレベルです。類友の法則で、立派な先達に恵まれてきたおかげです。
他にも人柄や日常生活が個性的らしいのですが、日々考慮してきた結果、そういうことになりました。宜しくお願い致します。
西洋医学から離れた道を歩むのも理由あってのことですが、その話をすると文字数が百万を軽く超えます故、お察しいただけると幸いです。
幼い頃からずっとずっと、体調不良で低空飛行でした。
疫病騒動で職もなくなり、新しく外に出ようとも、えも言われぬ外気の悪さにダウン、再び引き篭もる羽目に……今はそんな生活をしています。
ある日唐突にムラムラと、自然を欲しました。
アーシングしたい。旅行もままならない。家のなかでゆらぎを、大地を感じたい。
けれど今は小さな箱のような家のなかで、ジッとしているしか能がない。
以前いただいたり購入したりした幾つかのボタニカルキャンドルが、ずっと本棚に飾ってありました。
眺めているうちに灯したくなりました。幾ら綺麗なドライフラワーで彩られていても、カテゴリーはろうそくだ。使ってこそのキャンドルだ。
暗闇でネット三昧こそ健康に悪かろう。脱硫マッチを擦りました。
そうしたらまぁ、ボタニカルキャンドル達の灯火のなんと綺麗なこと。薄暗い中のほのかなオレンジ。遠くを見通す檸檬色。彩りのお花も華やかで愛らしい。
夜な夜な癒されておりました。
てのひらにおさまるあたたかく美しい炎。ぼんやりと眺めているだけで、心の奥にある暗い塊が、ほとほと溶けて流れてゆきます。
それでも健康オタクの身体には、障る何かがありました。
この石油系の気配はナニ、この人工的なニオイはナニ?
それは綺麗なキャンドルに使用される、フツウのひとなら難なくスルー出来る各成分。如何に天然由来を謳われても、健康オタクの身体はリトマス試験紙。微量な気配も見落とせない。
一度でも違和感を覚えてしまうと、途端に悲しい気持ちになってしまいます。気分も上がらなくなってしまいます。
何かの成分が、私にモノ言うのでした。美しいキャンドル達は
「私達にアナタは合わないわ」
と、私に引導を渡すのでした。
今までにも数多あったことなのでした。スーパーやドラッグストアで、デパートの化粧品売り場で、美容院の薬剤で、素敵なお洋服の化繊で。
そうか。ボタニカルキャンドルさんとも、私はご縁が結べないのか。
しかし無駄に歳を重ねた結果、マイハートは図太くなっています。無駄に嘆くことも涙を流すコトもナイ。ひとに誇れる肩書きも職歴もないけれど、私には長患いと薬害の経験がある。人生はすべて学び。
さっさと自分に合うお品を探すのです。
便利なネットの海を潜るのです。
潜ってすぐに、蜜蝋キャンドルを見つけました。
試してみようと思いました。山奥の叔父が採取した蜂蜜はビックリするほど美味しかった。そうだそうだ。ここはミツバチさんに頼りましょう。
ググればググるほど、蜜蝋の評判は上々です。
炎の1/fの揺らぎにはマイナスイオン効果、ライトセラビー効果があるとか。自律神経にも良いとか、空気を浄化し保湿効果もあるとか、アレルギーにも有効とか。
ナニソレ私の為にあるんじゃん。
早速購入しなければ。
だがお財布が軽かった。当然のことではありますが、そもそもキャンドルとは非日常を彩るもの。普段使いするには、完成品は良いお値段。
健康オタクは『オタク』です。ご存知のように、オタクは自家発電が出来ます。
(材料費だけならなんとかなりそう)
自作の支度に入りました。
作り方を動画やブログで検索し、材料をポチると、荷物の到着を待ちながら、不用品や百均で、最低限の道具を揃えました。粛々と作業を開始しました。
その後しばらくマイ不器用さに泣くのでした。
動画では簡単そうに見える作業も、強張る手指は追いつかない。初めてひとりで太巻きとお稲荷さんを作った娘時代を、何故か思い出して苦笑もしました。
四苦八苦しながら、ぼろぼろの形状のろうそくが幾つか出来ました。
形はアレだけど灯すと綺麗。それに蜜蝋って独特の香りがする。人工的じゃない、土っぽいような、古い倉のなかみたいな、昔みたいな香りがする。
思い切って挑戦してよかったー。優しいヒカリに涙もひかる。
せっせと作って、夜な夜な灯しました。気分のすぐれない日は、朝も昼も灯しました。材料を追加して、もっともっと作りました。ずっとうんと、灯していました。
「最近は調子が良さそうですね」
通院先の漢方のセンセイにも、鍼のセンセイにも褒められました。
「ここのところ蜜蝋キャンドルにハマって、自作もしちゃってるんです」
「そうですか、楽しく過ごせているようで何よりです」
そうそう、何かにハマっている時ってホントに楽しい。
蜜蝋の加工をしながら、ろうそくを灯しながら気付くこともありました。
動物性と言われるだけあって、蜜蝋は生き物なのでした。
優しくすると穏やかに動いてくれるけれど、こちらが焦ったり、急かしたりすると怒り出す。実家のわんこに似ています。
蜜蝋加工中には、昔も思い出しています。
若い頃に従事していた仕事では、ワックス加工がありました。当時使用していたのは石油系のパラフィンワックスですが、当然ながら蜜蝋とはまるで違う。そもそも素材が別物だし、融点だって全然違う。加工工程の注意点だって多々ありそう。
何処かのキャンドル教室に出向けるといいのだけど、化学物質の壁は高く険しい。今は独学しかありません。ググったり自分なりに観察したり、蟻の歩みで進みます。
器用ではないのと年齢や好みも相まって、ネットに溢れる華やかな形状のろうそくの方向にはいかないけれど、自分は素朴でレトロ可愛いろうそくが作りたいなあ。
その後も試作を続け、そこそこ成形出来たお品を、身内にも勧めてみます。
「効能はよくわからないけど、蜜蝋ってだけで良いね」
「でしょう?」
「備蓄にもいいよね」
「そうでしょう?」
調子にのった私は、ますます無骨に手を動かします。
ちいさな我が家の食卓で、身内のパソコンの傍で、寝る前のひとときにと、各々がろうそくを灯します。
皆が使ってくれるので、私は材料の追加注文をします。
こんなに良いお品ならば、今後も継続して使いたい。蜜蝋は貴重、かつイイお値段。美しい完成品には憧れるけど、私は自作でガンバロウ。
他の蜜蝋ヘビーユーザーさまも、各々で自作されているのかな。
だって蜜蝋ろうそくって、心身にめっちゃいい。
病弱仲間や体調不良に悩むリア友にも勧めたくなりました。
いつかプレゼント出来たらいいな。でもイヤゲモノになったら申し訳ないな。
もうしばらく、練習を続けることにしました。