健康オタクの棚が小さいろうそくで埋まる
こんにちは、健康オタクです。
夏も近づきつつありますが、変わらず蜜蝋ろうそくのお世話になっています。
ほのかなオレンジの炎に朝に夕にと癒され、深々と息を吸う日々。
身内も蜜蝋ろうそくには好意的なので過ごしやすい。
ひとりじゃないって素敵です。本日も美しい灯火を崇めます。
同時に、オノレの蜜蝋への執着を振り返るべき時期とも考えます。
冷静になりたい。客観的視点をいただきたい。
「灯した感想を聞かせてね」
ご縁をいただけた皆さまに無理を言い、各所に自作ろうそくを送りつける暴挙に出たのでした。
そして御多忙のさなか、私に合わせてくださる縁者さまは、総じてお優しいのでありました。
早々にレポートをくださる方、その都度ろうそくの様子を教えてくださる方、経過報告をエッセイのように仕上げてくださった方。
健康オタクは全方向に足を向けて寝られなくなりました。
『オットが気に入ったみたいです』
イエス! ウチもウチも!
『寝る前に灯していたら熟睡出来ました』
よかった! 私もそうなの!
『不思議とよく夢を見るようになりました。とうに忘れていた昔のことや、深層心理を掘り起こすような内容の』
そう、そうなの、いろんなコトを思い出すの!
『家にいながら、日常から離れた贅沢な時間を味わえます』
そうそうそうなのよ、この世の贅を濃縮した空間が出来上がるのよ!!
健康オタクはオタクなので、常に情熱と崇拝の狭間で生きています。
何処からともなく何かが聞こえてきたけれど気にしない。
モニターさまに共通する感想は、蜜蝋本来が持つあたたかみに関する事柄です。穏やかにひかる優しい灯火。ほのかに香る蜂蜜の香り。
絶大なる癒し効果が実証された瞬間です。健康オタクは益々有頂天になります。
全世界の人類がこの灯火に照らされたならば、全てが癒やされるに違いない。
世間にもたーんとアナウンスされればいいのに。
虎の威を、狼の牙をも借りてしまえばいいのに。
そこにふと、以前にお世話になったハーブセラピストさまのお言葉が降りてきました。
「メディカルハーブはどんなに効いても表立った効能をうたえないのよ。薬事法に引っかかるから、カテゴリーは雑貨なの」
となると、蜜蝋は?
検索すると、雑貨に食品、薬品添加物、モノによっては化粧品。
多様性のカタマリです。
冷静さと客観性を無くしたオタクは、加減を違えてはなりません。
そんな折、身内から神仏用ろうそくの依頼がありました。
ここは灯し切りサイズの出番です。
前記事でも触れましたが、灯し終えた残りロウでミニろうそくを作るのは、また違った楽しみです。お酒のシメに当たります。
そこで今回はミニろうそくをゴールに設定。
蜜蝋を溶かしパッドに流し固め薄い板を作成、その後大体の重さに揃えてカットします。
そのカケラをひとつずつ温めながら、手捻りで黙々作ります。
孤独な作業は大好きです。形はそれぞれではあるけれど、数を重ねているうちに、餃子をたたんでいるような気分になってきた。
出来上がりサイズは指先程度です。
必要以上に作って、ついでにディッピングもしました。
健康オタクは食いしん坊なので、作業中は、神戸元町の一番館を夢想していました。林檎のチョコはどうしてあんなに美味しいんだろう。
試験用にひとつ、灯してみました。
時間を計りつつ、いつの間にかぼんやりと、ただニコニコと眺めています。
同時に時間も溶けています。こがねいろタイムとでも申しましょうか。
30分程度、灯ってくれました。
とあるモニターさまのご感想を、もうひとつ思い出しました。
「蜜蝋ろうそくは消灯後に嫌な臭いが発生しないので、故人を偲ぶ時間にもいいですね」
そうなの。気管支の弱いひとや、嗅覚するどいペットにも安心なの。
そうそう、そのモニターさまは、残ったロウを小さな器に入れて、器ごとオーブンで弱めで加熱、素敵なプチろうそくにしていらしたのでした。とってもお洒落なのでした。
蜜蝋キャンドルの作り方を検索していた頃、ふた通りの記述を見つけました。
①蜜蝋は複雑な作業には向かない
②粘り気があるので、細かい細工に向いている
方向性が真逆ですが、どちらも納得出来ました。
蜜蝋の色や香りは、入手する度に違っています。純度や鮮度も感じます。採れたて野菜やお刺身に通じるものがあって、極力シンプルに接したい。
反面、長年クレヨンや粘土として教育現場で愛されてきただけあって、蜜蝋自体が心地良い。創作欲や表現衝動との戦いです。
養蜂家さんのインタビュー記事も見つけました。
『巣から剥がした蜜蝋の不純物を漉す作業回数は、少ない方がいいんです』
この記事を見つけたということは、手早い作業への天啓でありましょうか。
最近なかなか伺えなくなってしまったのですが、某地方に、七海ひろき的素敵パティシエールさんが営む素敵オトナ洋菓子店がございまして。
むかーし店頭で、お話しさせていただいたことがありまして。
「パティシエールさんになるのって大変じゃないですか?」
「そうですね。訓練がいりますね」
「訓練ですか。憧れているお子さんが多い職業ですが、そういうお子さんには何て答えるんですか?」
「根気がいる仕事なので、どんなに簡単なレシピでも、まずは千回作ってごらん
って話します」
「せんかい、ですか?」
「そう、千回です」
そうすると色々わかると仰っていたのです。
自分も蜜蝋ろうそくを千回作ったら、ナニかが見えてくるかしら。
オタクはじっと手を見るのでした。
分け入っても分け入っても青い山、と詠んだのは種田山頭火でしたね。